晴海通り

世界で一番美しい少年の晴海通りのレビュー・感想・評価

世界で一番美しい少年(2021年製作の映画)
3.7
オーディションで選ばれた世にも美しき15歳の少年。ヴィスコンティ翁でなくとも、彼の美しさには目を見張るだろう。ヴィスコンティから守られながら無事に終えた『ヴェニスに死す』の撮影。

しかしその直後彼の人生に起きたことは児童虐待以外の何物でもない。頭を抱えてしまうのは、プロモーションで彼が来日し、日本語の歌さえ歌わされていたこと。あの有名漫画にまで影響を与えるほどの美貌。だが彼の内面を誰が顧ただろうか。昨年日本を震撼させたJにまつわる一連ののことを思い出さざるを得ない。彼を見出したはずのヴィスコンティでさえ、完成後の会見では「16歳になった彼はもう美しくない」と言い放つ罪深さ。

称賛されているから、報酬を与えられているからいいというものではない。ただただ外見だけを褒めそやし、あたかも鑑賞物のように扱うことが子供をどれだけ深く傷つけ損なうかということが、痛いほど感じられた。そしてその傷は幼い心に深く深く刻まれ、大人になってからの彼らを蝕んでいく。人間不信、無力感、絶望…取り返しのつかないこと。

救いは最後に娘が語ること。やはり貧困や家族の機能不全は、残念ながら“起こってしまうもの”として、公的な機関が子供の人権や人格を守る仕組みが必要だと改めて思いました。ささやかでも確かな幸せが、現在の彼を守りますように。
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