みむさん

ワース 命の値段のみむさんのレビュー・感想・評価

ワース 命の値段(2019年製作の映画)
3.3
911の犠牲者補償金プログラムで主任として補償金算定を行う主人公を通して、「命の平等」「公平な補償」についてや、遺族と向き合い理解しあおうとする姿を描く。
まるで主人公を追った再現ドラマのようだった。
「キンダーガーテン・ティーチャー」のサラ・コランジェロ監督作。
マイケル・キートン、スタンリー・トゥッチがメインキャラクターを好演。

命の価値は計算式では計れないし、値段はない。しかし、どこかで線引きをしなければならないのもよくわかる。

理想を言えば公平な補償が最善なのだけど、予想通りさまざまな問題や矛盾が発生する。
一人の人間として被害者に寄り添いたい気持ちと、できるだけ迅速に補償を行き渡らせたい気持ちの鬩ぎ合い。

これはかなり胃が痛くなる話だが、犠牲者や遺族はそれ以上。
ルールを決めるのは合理的だが境界線上の人はどうする?同じように命を失ったのに値踏みされているようで不満な遺族の気持ちもわかりすぎる。
遺族側も尊厳をかけて訴えかける。
遺族側代表のチャールズの姿勢も良かった。演じたのはスタンリー・トゥッチ。

これは911の話だが規模は異なってもいろんなケースにあてはまる。
所得制限、州によって違う婚姻の法の扱い、後遺症の発症時期等、気が遠くなる話だが誠意をもって対応しなければならない。

マイケル・キートンが演じる基金の管理責任者のように、なるべく多くの人と話し合い理解してもらおうという姿勢の人がいてくれてよかったが、これでも全員はカバーできず納得しない人やルールから抜け落ちる人もいるだろう。

それでも大切なのはその向き合う真摯な姿勢と信頼関係。

こういう人が政治家に増えればもう少し解決できる問題も増えるかもしれない。

この人は他にも銃乱射事件の犠牲者遺族への補償等にも尽力したらしい。退役軍人のケアとかもう少し細やかに行うことができればいいのにと思う。
(問題の種類も管轄も違うのはわかってるし尽力してる人はいるだろうけど、戦争PTSD関連のたくさんの映画でその辺りの問題提起はされてて実際のところどうなんだろうね?と、ふと思ったのでした)