ぶみ

ワース 命の値段のぶみのレビュー・感想・評価

ワース 命の値段(2019年製作の映画)
3.5
9・11テロ犠牲者の命を、ドル換算した男がいた。

ケネス・ファインバーグが上梓した自身の回想録『What is life worth?』を、サラ・コランジェロ監督、マイケル・キートン主演により映像化した実話をベースとしたドラマ。
アメリカ同時多発テロの被害者と遺族を救済するための補償基金プログラムの特別管理人に就いた弁護士の姿を描く。
主人公となる弁護士ファインバーグをキートン、被害者遺族のリーダー的存在をスタンリー・トゥッチが演じているほか、エイミー・ライアン、テイト・ドノヴァン等が登場。
物語は、被害者遺族に対し、政府が定めた一定の計算式により補償金を支払う事務を請け負った弁護士が、遺族と対峙する姿が描かれるのだが、簡単に言えば、一定の計算式ではじかれた数字は、所謂命の値段。
日本でも、事故で亡くなったり怪我をしたりした際に逸失利益という名のもと、命の格差がつけられているのが現実なのだが、同じようなことが同時多発テロでも行われていたのがまず驚き。
そして、金額がどうであれ、どう転んでも被害者遺族が納得するはずもないため、私だったら絶対に引き受けたくない仕事であるのだが、誰かがやらねばならないのも事実であり、汚れ役を請け負ったファインバーグには頭が下がるばかり。
そんな彼をキートンが安定感抜群の演技で再現してくれている。
派手なアクションも、緊張感が張り詰めたヒリヒリするようなサスペンスもない地味な物語ながら、社会派作品としての意義は大きく、同時多発テロを扱った作品群の中でも、独自の視点で、その後を描いた一作。

あなたは橋じゃない。
ぶみ

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