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ワース 命の値段のクリームのレビュー・感想・評価

ワース 命の値段(2019年製作の映画)
3.9
実話もの。9.11の補償金の話てす。「命の値段」って何?被害者や遺族の心情を無視し、その人の年収等に応じて補償金を計算すると言う。無神経な国の上層部達の考えた、表向きは救済だが、真の目的は企業の救済と言う胸糞プログラム。財源は無限ではなく難しい問題と向き合った主人公。彼がいなければどうなっていたのだろう?地味な作品ですが、やはり人を動かすのは、心なのだと思える良い作品だったと思います。

9.11同時多発テロの被害者と遺族救済の為の補償基金プログラムの特別管理人を司法長官から任命されたファインバーグは無償で、プロジェクトに取り組みます。法律事務所の経営パートナーのバイロスや、世界貿易センタービル内の法律事務所に入社予定だったプリヤ達と共に約7000人の被害者と遺族の収入に応じた独自の計算式で補償金額を算出。 対象者は補償金を受け取る代わりに、航空会社や空港等、非難対象となり得る組織への提訴の権利を放棄して貰う事になっていた。



ネタバレ↓



ファインバーグは、善意の人。少しでも早く被害者や遺族の為にと補償金の申請を推し進めるのですが、彼等の心が置いてきぼりで、反感を買ってしまいます。彼以外のメンバーは、対象者の話を聞き心を痛めていました。
そんな中、ファインバーグも消防士の妻と接触します。彼女は、夫ニックの命は数字に換えられないのでお金は要らないと言う。
後にニックには、隠し子が2人いて、彼等の存在を妻が知りショックを受ける事になりますが、彼女はその子供達の補償もお願いしますと言います。
皆の為に補償基金を修正せよと呼びかける男ウルフ。彼も妻は、数字で表せないと反発します。当然です。
ゲイカップルの恋人を失ったトムは、疎遠だった両親より、自分の方が家族だし、最後に彼が連絡を残したのも自分なのだから、申請したいと言います。こちらは州の法律上認められませんでした。いよいよ、期限が迫っても全く申請者は増えません。
ウルフのアドバイスもあり、ファインバーグは計算を辞め、対象者1人1人と向き合う事にしました。しかし、目標の申請者80%達成には至りませんでした。
ウルフがブログで「ファインバーグは信頼に値する人間」と評価したのを機に、申請者が増え、95%を得る事に成功するのでした。

ファインバーグは、彼なりに皆の為と思って始めたのだが、やはり成功者なので一般人の心の部分に寄り添えていなかった。しかし、間違いに気付き軌道修正。あの立場で間違いを認められるのは、素晴らしい人だと思います。また、意外な部分で再び傷付く消防士の妻やゲイの恋人等、大切な人を失っただけでは済まされず、傷口が広がって行くのは、心が痛かったです。
そして、能天気に主人公へ電話して来たり、イラクの関与をほのめかす演説をする息子ブッシュが、滑稽に見える皮肉が秀逸。呆れます。
それでも日本の補償よりは、マシなのだろうけど…。
ウルフ役のスタンリー·トゥッチも素敵でした。

※被害者補償基金は計5,560人に公的資金から70億ドル超が支払われた。その後、2011年と19年に再開および延長が決定し、長期の健康被害に苦しむ人々の救済を続けている。
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