木蘭

帰らない日曜日の木蘭のレビュー・感想・評価

帰らない日曜日(2021年製作の映画)
4.9
 身分違いの恋を描いたメロドラマかと思ったら全然違った上に、想像以上に素晴らしい作品だった。

 1924年3月30日の母の日を主軸にして、交差するタイムラインが象徴する様に、ヒロインの人生の記憶という物語を美しく完璧な・・・カメラワーク、ロケーション、インテリア、メイクと衣装、そして名優たちの演技・・・映像と音楽で雄弁に語る。

 わずかなメイクと衣装の違いだけでヒロインの10代から22歳の少女時代と、40代の中年期を演じ分けるオデッサ・ヤングと、彼女のパートナー役たちとの醸し出す空気が素晴らしくて、幼く危うい身分違いの恋と、出自や人種を越えて魂が惹かれ合う大人の愛との対比が見事。

 いかにも大英帝国的な映画だけれども、監督はフランス人の女性。
 女性監督ならではだな・・・と個人的に感じたのは、ちゃんと避妊具と"シード"を描く事かな。

 滅び行く貴族とジェントリーと、勃興する労働者階級と植民地出身者との対比の物語でもあって、決壊しそうになる家と心を、体面を繕うことで必死で守っている旧家の家族に胸が張り裂けそうになる。
 一方で、お屋敷を出た後のヒロインが、(物心共に)豊かに成って行く姿には、純粋に心を奪われた。

 でも・・・本を読もう、物語を紡ごう!出自が違っても、人々を繋ぎ、成長させるのは文学・・・という強い思いも随所に感じるんだな。
 「シェークスピアは読んだよ。」という給仕の青年に、エマが唯一笑顔を見せるんだよね。
木蘭

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