愛する人の死を糧に生きたジェーン。
そして、そんな日々を回想する。
始まりは1924年。メイドが一斉に休みを取ることが出来る“母の日”の日曜日。
孤児院育ちのジェーンは里帰りする場所もなかった。
ジェーンは、メイドとして働く御屋敷と親しい関係にある、名家の子息ポールと深い関係を持っていた。
母の日の日曜日、御屋敷でふたりきりで過ごすジェーンとポール。
裸体を惜しみなく晒す。まったりと流れる時間。窓から緩く差し込む光が2人を包む。
愛のある美しい時間の中でも、刹那の恋であることが頭をよぎる。だからこそ美しいのだろうか。
だけれども、2人を引き裂いたのは身分の違いではなかった。
第一次世界大戦後のイングランド。
多くの若者の命が失われた。
若者の死がどれだけ辛いことなのか、切実に伝わってくる。コリン・ファースとオリヴィア・コールマン夫妻の苦悩も。
「生まれたときにすべて奪われていたあなたは、失うものはない。だから恐いものなんてない、それはあなたの強みなのよ」
全てを失い、喪失感に苛まれる御屋敷の夫人言葉が、ジェーンの人生を後押しする。
文学の匂いが漂う映画。