けーすけ

ちょっと思い出しただけのけーすけのレビュー・感想・評価

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)
3.5
2021年7月26日(月)。佐伯照生(池松壮亮)は舞台照明を仕事として日々を生きていた。一方、野原葉(伊藤沙莉)はタクシー運転手として東京を走っていた。その日「トイレに行きたい」と言った乗客のために寄った劇場で、葉は昔付き合っていた照生の姿を見かける・・・






『くれなずめ』などの松居大悟による監督・脚本のオリジナルラブストーリー作品。
バンド、クリープハイプの曲『ナイト・オン・ザ・プラネット』を元に作られた映画ではありますが、楽曲の元ネタも同バンドのボーカル・尾崎世界観が大好きなジム・ジャームッシュ監督の同名オムニバス映画から作られたもの。



冒頭、コロナ禍となった世界で人々がみんなマスクをしているというのが“今”を感じさせる作り。(十数年後、新型コロナを知らない世代が生まれて「この映画なんでみんなマスクしてるんだろう?」ってなる世の中が早くきますように)


本作では過去の時系列を順に追っていくのではなく、(2020年)7月26日(日)、(2019年)7月26日(金)、(2018年)7月26日(木)・・・といった感じで、7月26日という1日を切り取って過去へ遡りながら物語が進みます。日時と曜日はカレンダー付の時計で表現されているのですが、「20**年」と明示はされていないので、その部分だけ頭に入れておくと理解もすんなりできると思います。

2019年は誰もマスクを着けてなかったり、オリンピック開催に向けて増えたロンドンタクシーが、過去ではセダンタイプのものになっていたりと、そういった部分でも現在と過去の変化をつけている部分となっております。


主演の池松壮亮と伊藤沙莉のハマりっぷりが凄く、観ていての安心感がとても良かったです。
また、彼らに関わる登場人物にも永瀬正敏、國村隼、成田凌を筆頭とした豪華キャスト。成田凌なんか「え?成田凌っぽいけど本人?」ってくらいの脇役。もう少し見せ場ほしかったかも。笑


2021年のヒット映画『花束みたいな恋をした』もそうでしたが、二人がどうなったかという結末が明示させられていて、過去に何があったかを知らされるつくりは見ていて心がチクチクしますね…。
我々も経験したであろう出会いや別れを追体験させられ、「あの頃」をちょっと思い出して甘酸っぱい気持ちになるような、優しいつくりの映画でした。


2022/01/23(日) 試写会にて鑑賞。ヒューマントラストシネマ渋谷 シアター1 E-6
[2022-006]
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