ヘイヘイ

ちょっと思い出しただけのヘイヘイのレビュー・感想・評価

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)
4.6
なんでもない、だけど二度と戻れない愛おしい日々を、”ちょっと思い出しただけ”

どんな恋にもいずれ終わりはやってくる。

ありそうでなかった感じの不思議な映画でした。
すごい乱暴にまとめると、メメント+花束みたいな恋をした+ララランド+ナイトオンザプラネットな作品。

おすすめされて観に行きましたが、情報ほぼ0状態だったので最初はあれ?これってつまりどゆこと??30分くらいして、んーそゆことね〜、と。状況把握してからは、加速度的にのめり込んでみてしまいました。

以下、ネタバレありありなので、鑑賞済の方からスクロールください。






















メメントにも同じこと言えるのですが、時間軸の逆行効果がここまで出るかぁ、と。
普通の時間軸の話であれば、単なる出会いと別れの物語。そこに1年ずつ同じ日を遡っていくっていうアイデアが加わっただけで劇的に求心力のあるお話になってます。


以下、全然まとまってないけど徒然なるままに本作の好きなポイントをあげてきます。

どんな恋にもいつか終わりはやってくる。
だから、現実の恋愛ってなんか哀しくてさみしい感じになりがち。
これが時間軸の逆転によって、物語としての最高潮(あの付き合い初めのドキドキ感)が作品のド終盤にやってくることとなり、観てる方としては、段々話が進んでいく(物語としては遡る)うちにどんどん幸せな気分にさせられちゃいました。そういう意味で不思議な魅力のある映画だなぁと。
(最後の最後は、結局もの哀しい結末が待っているのだけれど)

花束〜もでしたが、ついつい共感してしまう会話やこんな経験あるある!ていうシークエンスが本作も多いので、観終わったあとに色々語りたくなってしまう”強度”を持ってます。

中盤のタクシー内での段々ヒートアップしてしまう口論も、昔の自分もこういうケンカしてたなぁ、としみじみわかりみ。

若干台詞ぽく感じちゃう部分もありましたが、嘘くさくない自然な演技の演出が多かったのが好印象!

主演の2人、國村隼の演技よい。
特に伊藤沙莉氏は、ほんとにこういう人いるんじゃない?って感じ出せるのすごい。付き合いはじめの幸せの絶頂にいるときのあの笑い方がほんと自然でやられちゃいました。観てるこっちも何だか幸せな気持ちになってしまう。。

脳にダイレクトに響くセリフも多かった。
“愛は見返りを求めないもの”
“言葉にしたら壊れてしまう”
“でも、言葉にしなきゃわかんないじゃん”

作品中では、伊藤サイドが”言葉にしてほしい”
池松サイドが、”言葉にしなくても伝わるよね”っていう価値観の違いがありましたね。それが、中盤の口論シーンの発端でもあるのだけれど。

個人的には、ビルの屋上から明かりが灯っている建物を見つめて、伊藤沙莉氏が”みんな生きてるんだね”(みたいな台詞)っていったシーンがピンポイントで刺さった。
自分もよく深夜徘徊しながら、灯りがポツポツついてるのをみて、あー自分以外にもここで生活してる人いるんだよなぁ、1人1人自分の人生を生きてるんだよなぁ、と思ったりしてます。(そしたら急に自分がちっぽけな存在に感じたりして)
 

あとは、ずーっと待ち続けている永瀬正敏。めっちゃイイ味出てました。

”待ってたら、いつか会える”

順行の時間軸の物語なら、ずっと会えなくて会えなくて…なのだけども、これ遡る物語なので、4回くらい遡った時に会えちゃうんですよね。なんだか、じわーと感動しちゃいました。このサイドエピソードがあるのとないのって結構違うと思ってます。

そして、タクシーでの告白。
好きなとこを1つずつ言葉にしているとこに、その口をふさぐようにしてキスするとこで昇天😇(言葉を超えた感情)

そしてそして、最終盤の一連のシークエンス。あの時ああしていたら、今のあなたとわたしの関係性はもしかしたら違ったものになっていたかもしれない。
(このシーンはララランドぽい)
んーこれ、誰でも思ってしまうよね。
とっても切ない。

ラストカットが初めて7月27日に進み、朝焼けのシーンで終わる。

“夜にしがみついて、朝で溶かして
何かを引きずって、それも忘れて
だけどまだ苦くて(甘くて)、すごく苦くて(甘くて)
結局こうやって何か待ってる”

これ、すんごい余韻の残る感じがして素晴らしかったです。
1番の歌詞は”苦い”、2番の歌詞は”甘い”んですよね。はぁ。。

クリープハイプの”栞”もすごい好きなのですが、作品の題材となったこの曲からも、
“後悔したって別にいいじゃん”
“その後悔の気持ちも捨てずに、明日に進んでいったっていいじゃん”
“苦くもあり、甘くもある思い出だから、何かないかなってちょっと期待しちゃうよね”
ていう前向きな姿勢のメッセージを受け取りました。


もう戻らない時間を”ちょっと思い出しただけ”
そんな日もあってもいいんじゃないんでしょうか?

たまにはね、ほどほどにね。
ヘイヘイ

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