ハヤシ

ちょっと思い出しただけのハヤシのネタバレレビュー・内容・結末

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

映像単体でいうと美しい。よい邦画のオーラがある。本編における変則的な時間軸での展開や、それを説明するカットなどは良く出来ている。正直、初見では即座に理解できない構成だけど、「20xx年」とか「〜年前」みたいな字幕が付かなくて良かった。

構成は少し『500日のサマー』に似てますよね(私はあの映画が苦手で微塵も感動しなかったですが笑)

ただし、自分の過去や経験と紐づくような場面は無く、共感がほとんどできなかったため評価が高くならなかった。とはいえ、主演二人が恋愛のど真ん中にいる場面の幸せな描写では涙が出てきた。

この作品って、基本的に感情が変化する微細なプロセスを捨象してるんですよね。
撮影の手法として、毎年7月26日を逆から(新しい順から)1年ずつ数年間遡るという形式である以上、それぞれの時間軸で見れば、人物の内的なステータスはある程度固まっている。

ゆえに、本編では「破局後(現在の時間軸)」「破局後(現在から一年前)」「破局寸前」「恋愛」「告白」「初対面」という場面が存在しつつも、「破局寸前」⇔「恋愛中」⇔「告白」間の内面の推移が表現されず、すべて視聴者に委ねられてて割とハイコンテクストなんですよね。あるいは照生の「一年後の今日に葉へプロポーズする」という言葉(の不履行)ような、少しベタな手法による演出になってしまう。

そのためか、人間同士の対話よりもモノの存在に焦点を置いている。バレッタ、誕生日ケーキ、タバコ。この辺の演出は上手い。

ケーキは、破局前と恋愛中でサイズとスプーンの数から示唆するものがありすぎる。タバコは、照生がきっかけで葉が吸い始め(喫煙者のイメージの強いタクシードライバーとはいえ、メタ的には初対面や告白の場面で一切吸う場面がないため彼と付き合ってからor別れてからと考えられる)、それがやがて現・夫(屋敷)との出会いの端緒になっている。

伊藤沙莉が健気で真っ直ぐ(+自己肯定感が低い)という人物造形で、脚本なかなか良いなって思える。それと本人の演技がもう自然すぎて最高。笑顔が本当にかわいい。

クリープハイプは初めて視聴しましたが、私には正直合いませんでした。学生の頃なら刺さったかな?(多方面からキレられそう)
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