荊冠

ちょっと思い出しただけの荊冠のレビュー・感想・評価

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)
4.0
久しぶりにまともに観れる新作邦画を観た。高円寺と新宿の感性を足して割った感じがサブカル好きに絶妙に刺さりそうだが、それ以前に邦画あるあるな臭くて無駄なセリフがなく洗練されていて、ただの雰囲気映画ではなくしっかりと構成されているのが非常に好感が持てる。
画角はちょっと引っかかるところもあるが、スタジオではなく実際の高円寺や新宿の街で何とか上手く撮ろうとした意気込みが見て取れる。
自分のことで頭が一杯になって彼女どころじゃなくなってる男、好きなのに相手の拒絶の態度に思わず喧嘩腰になってしまう女──恋した経験のある誰もが「わ、分かる……」と唸ってしまう、あの言語化できないほろ苦いすれ違いが非常に巧みに描かれていて、感服すると共に未だに胸が痛い。
コロナウイルスの渦中の昨今が舞台であることや、ノリツッコミすることで高い「共感性」を示す登場人物らのややテンポが早めの会話など、まさに「今」の若者映画という趣。彼らの言語コミュニケーション能力の高さは監督の人物像の反映だろうか。松居大悟、初めて知った名前だが少しチェックしてみようと思った。
また主演の池松壮亮と伊藤沙莉の名前も初めて知った。伊藤沙莉に関しては、タクシー運転手でそのビジュアルはないだろと初めは斜に構えまくって観ていたが、魅力的なハスキーボイスと素朴な演技に気が付くと感情移入させられていた。煙草を吸う女はいい女だ。
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