ザビエル

ちょっと思い出しただけのザビエルのネタバレレビュー・内容・結末

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

元彼を引きずった経験と表現に関わることをしているというダブルパンチな共通点だけでも刺さるのに、序盤で別れているという情報を見せた上で2人がいかにして出会い、惹かれ、共に過ごし、すれ違ったかを時系列をバラバラにして見せられた。
なので点と点が線で繋がっていく感覚。
恋愛映画ってどうしても男女の生々しさ(性にどストライクに結びついていく感じ)が描かれていることが多く、観ていて緊張するというか1人で勝手に神妙な顔になるのだが、この2人の場合はそう言った雰囲気がなく、お互いに笑いのツボやテンション、好きなものがぴったりで、大親友と恋人の間を行き来していると言った感じで、その雰囲気がとても素敵で、とても羨ましかった。
お互いにしか分からないようなネタでふざけ合い、おならだって隠さなくて笑い合って正に素の姿でいられる。
そんな印象を受けた。
しかし、最終的にはこの2人は別れる。
うまくいっている時は何をやっても楽しい。困難にぶつかった時にどうなるかが問題だ〜みたいな言葉をふと思い出した。
妙に達観して大人びた子どもが主人公を気遣うシーンや、タクシーでの告白など、
くすりと笑えるシーンも散りばめられており、バランスが本当に絶妙だった。
あんなに素の姿を見せ合えるパートナーでも、分かり合えない、気持ちを上手く伝えられない、受け取れないことがあるんだと。「愛って逃げだよ。でもそれでいいんだよ。1人だとしんどいからみんな。」
みたいな事を言ったマスターの台詞が耳に残る。
ラストのシーンでナンパした男と結婚して子どももいることには驚いた。
一方でずっと同棲していた家に猫と共に住み、髪飾りも持っている男との差も感じられた。
引きずりまくっていたのはむしろ男の方だったのかなと。
ナンパ男もとても誠実ないいお父さんって感じで、実は忘れられないながらも思い出として元彼との復縁を望むこともなくこの人と結婚したことに対して、ああこの人は区切りをつけてのだと素直に納得できた。
観終わった後の席にはちらほらカップルもいて、映画のように破局した自分、失っていないカップルたちとは、今圧倒的に見えてる世界が違うだろうなと勝手に思った。
帰り道、同じ映画を観ていたであろうカップルの男性が、女性に上着をかけていて
羨ましさと、虚しさと、その他の言葉にするのが難しい感情が渦巻きながら通り過ぎて帰ったのはしんどかった。
話の構成、魅せ方、芝居どれも刺さりすぎた映画だった。
ザビエル

ザビエル