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ちょっと思い出しただけのshuのレビュー・感想・評価

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)
3.2
『ちょっと思い出しただけ』

ナイト・オン・ザ・プラネットのオマージュというか、劇中でも擦りまくるくらい根幹にはそれがあり、自分の人生のプランがある、ときっぱりした態度を見せるウィノナ・ライダーとの対比として男女のだらっとしたモラトリアム的な生活、関係性、からの別れまでが描かれる。
凄く雑分類をすると『花束みたいな恋をした』の系譜というか、男女のありふれた出会いから別れまでをリアリティたっぷりにディテール増し増しでエモく描写していく、まあよくありそうな映画ではあるんだけど、男の誕生日という定点観測で、さらにそれを遡りながら描く構成はちょっと面白かった。
尾崎世界観など周囲の人間を使った時間経過の表現は仕掛けとして効果的だった。
池松壮亮、伊藤沙莉の演技はとても良く、二人の楽しそうな一幕ではこっちまでつられてにやにやするほど。
二人の演技がいいだけに、余計に人と人との出会いから別れまでの変遷の面倒くささを思い知らされるというか、人間って面倒くさいなというのが一番の感想だった。
いわゆる「パッケージングされたエモ」に対しては共感半分拒否感半分で受け止めてしまうけれど、形は違えど多くの人にとって覚えがある「終わりと始まり」だからこそエモくもなるわけで、そういう意味ではまんまといくつかのツボを突かれたということでもある。
映画としては高評価。
演技力が高いが故に、特に別れのシーンの嫌な感じがずっと鑑賞中拭えず(どっちも面倒くさすぎる。特に葉)、それが見終えても残っていたので後味はちょっと悪い。人間面倒くさい。
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