ゆずっきーに

ちょっと思い出しただけのゆずっきーにのネタバレレビュー・内容・結末

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

かつて自分にトリュフォーやポンジュノを薦めてくれた恩師が推していた邦画だったのを思い出して鑑賞。

令和エモエモ映画の筆頭格という感じだろうか?『花束みたいな恋をした』ほどの臭さもなく、池松壮亮×伊藤沙莉という名優達に支えられしっかりと作品が作品として立ち上がっていた(『ボクたちはみんな大人になれなかった』とか観たことないけど、思いっきりエモいぜ😎みたいな作品にはやっぱり食指が動かない)。
ジャームッシュの世界観を恋愛厨の尾崎世界観が恋愛脳で塗り潰し、松居大悟監督がバランスよくまとめ上げた印象。ジャームッシュと現代日本的な“恋愛”ってずいぶん遠い場所にあるような気もするが、松居監督の卓越した手腕が光る。

脚本のメッセージ性はやや弱めだが、タクシー運転手を続ける女とダンサーの次の人生の展望が見えずに一人佇む男を描く感じはすごく好き。
夢や目標に向かうでもなく、過去をちょっとだけ思い出し、やりきれない想いを抱えながらそれでも夜明けを迎えおぼつかない足取りで生きていく。無名なる者達への穏やかな人間讃歌。美しくまばゆい思い出はその後の辛い出来事によって損なわれるものではないんだよ、というメッセージだったろうか。

撮り方に関しては『ナイト・オン・ザ・プラネット』や『パターソン』といったジャームッシュ作品のオマージュを所々に感じつつ(時計のリフレインとか永瀬正敏のベンチとか)、水族館の幻惑的な光など様になる画もあり。ただ意地悪な捉え方をすれば全体にクセのない撮り方で、ジャームッシュオタクたちを満足させる仕上がりになっているのかは不明。

NY屋敷の演技めっちゃよかったなー、もっともっとスクリーンでの活躍も観てみたい。
ゆずっきーに

ゆずっきーに