odyss

赤いハンカチのodyssのレビュー・感想・評価

赤いハンカチ(1964年製作の映画)
3.7
【肩の凝らない推理物】

石原裕次郎と浅丘ルリ子による昭和39年の映画。

石原はエリート刑事で、麻薬密売に関わっていた屋台のオヤジを逮捕して尋問しますがなかなか口を割らず、オヤジが護送途中に同僚刑事(二谷英明)のピストルを奪って逃げようとしたところを射殺してしまいます。オヤジの娘が浅丘ルリ子で町工場に勤めているという設定ですが、父を殺したと彼女になじられた石原は警察を辞職して僻地で土方をする身の上となります。4年後、そんな石原を中年刑事(金子信雄)が尋ねてきて、射殺事件にかかわった刑事(二谷英明)が今は実業家として裕福な暮らしをし、浅丘を妻としていると告げ知らせます。あの事件には裏があるのではないか、そう言われた石原は・・・・

筋書き全体が射殺事件の謎解きに関わっているのですが、推理ドラマのようなアリバイ捜査だとか物的証拠といった側面からではなく、あくまで各登場人物の来歴や心理といったところから謎に迫っているので、観客からすると謎によって興味をつなぎとめられ、かといって純粋な推理物のように細かいところまで覚えている必要もないので、リラックスして楽しみながら見ることができます。その点で設定や脚本はよくできていると言えましょう。

浅丘ルリ子は最初は町工場に勤める庶民的な娘として、のちに成功した実業家のリッチな妻として出てきて、色々な顔を見せてくれるところがいい。地味ながら謎解きに動く中年刑事を演じる金子信雄も味がありますし、学歴のあるエリート刑事である石原にたいして、学歴のない下積み刑事としてひそかに対抗心を抱く上昇志向の二谷英明も単なるサブの役に終わらない幅の広さを見せてくれます。このころNHKのテレビドラマ『ポンポン大将』で顔が売れつつあった桂小金治(司会者として大成功を収めるのはこれよりあと)が出ているのも一興。

映像も、過ぎない程度に凝った部分があり、石原の屈折した心情を見事に表現しています。今から振り返ってみて、昭和30年代の石原裕次郎主演映画としては出来のいいほうでしょう。
odyss

odyss