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麻希のいる世界のshishishiのレビュー・感想・評価

麻希のいる世界(2022年製作の映画)
4.6
あぁ、2022年はもうこれを見られたんだからいいな。

「世界のすべてを敵にまわしても、たったひとり、君さえいればそれでいい」、、、つまりは「世界には君がいてくれればいい。そのためなら私すらいなくなってかまわない」という巨大な?と形容するほかない物語が、家、学校、自転車、海、といった掃いて捨てるほど存在する景色の中で描かれる途方もない映画であった。

食物連鎖という残酷な力学を暴力的に肯定し、カリスマである麻希が鎮座する椅子の、やがてはたやすく交換されるであろう部品の一部となることに全てを注ぐ由希の、自己犠牲などというペミシスティックな文脈すらものの見事に朽ち果てさせてみせる身体全体にみなぎる狂気、、、そして麻希を一点に見つめ続ける瞳、、、。
対する麻希の何ら外の景色(時には由希すらも!)を取り込まない虚無の眼球。あぁ残酷。

恋愛といった名前のつく凡百の感情が介在する余地はそこになく、それらに対して由希は簡単に背を向けて麻希のいる場所へと進んでゆく。

麻希が麻希でなくなるも、それでも麻希のいる世界の存続を図り、その成就の微かな希望を見届ける由希を正面から捉えたアップに、いったい誰が感動せずにいられようか、、、。
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