TaiRa

麻希のいる世界のTaiRaのレビュー・感想・評価

麻希のいる世界(2022年製作の映画)
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塩田明彦が少女ファム・ファタル(フィム・フィタル?)ものに回帰。

『さよならくちびる』で異様な芝居(即興だったらしい)してた二人を主演に据えた映画。今回は役名だけ引き継いだオリジナルだが、並行世界の彼女たちと考えると味わい深い。映画の最初と最後がサイレント映画のマナーに則っていて面食らう。先を行く者と後を追う者の関係性は映画を通して描かれる彼女たちの関係性そのものだし。多くは語らずも雄弁な演出は流石だと思う。塩田が描いて来た「運命の少女」たちより更に破滅的なカオスの化身として世界を漂う日髙麻鈴は凄い。正しく目が据わっている。彼女の周りの人間が男女・大人・子供問わず(勝手に)破滅して行くのが素晴らしい。塩田らしい画面の奥行きを活かした構図も頻出。手前と奥の二層で芝居を作る演出はテーマとも合う。あちら側の世界を生きる麻希とこちら側の由希。始まりと終わりで特に顕著に描かれる構図。同時に平面的な横並びの構図も効果的に使っていて上手い。長回しのショットに於いては、その動線の工夫とカメラワークの絡み合いが巧みで、端的に言って「演出が上手い」。ホンの構成上、正統派青春劇になりそうな「BANDやろうぜ」からのスカし、観念優先で唐突な終盤など、突拍子もない展開も多いがラストの決まり方で全部許容した。音楽映画としても『さよならくちびる』より良いのは向井秀徳に依る所が大きい。「才能がある」表現の分かりやすさ。
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