なべ

ジェームズ・ボンドとしてのなべのレビュー・感想・評価

ジェームズ・ボンドとして(2021年製作の映画)
3.5
 ノー・タイム・トゥ・ダイのBlu-rayに収められた特典映像のような作品。きっとそうなると思う。

 ガキの頃はガジェット兵器を使うスパイが活躍する映画ってだけで、見ないわけない作品だったのだが、映画を観る目が肥えてくると、どんどん現実離れしていく荒唐無稽な世界観がガキっぽく思えて、次第に距離を置くようになった。作品からストーリーがなくなり、プロットと設定だけで押し切るスタイルに嫌気がさして、ムーンレイカーで宇宙に行ったとき、007とは縁を切った。
 ダイ・ハードを観ては、この巻き込まれる男が007だったらどうだろう?とか、ボーンシリーズを観て、記憶をなくしたジェームズ・ボンドはありかも!などと妄想を膨らませることはあっても、007を劇場で見ることはなくなった。
 だからカジノロワイヤルには度肝を抜かれた。現実路線に007が方向転換した驚きと、身体を張って、自ら傷つき任務を遂行するジェームズ・ボンドに興奮した。
 これだよ!こういう007が見たかったんだよ!
 最初、チンピラのようなダニエル・クレイグを見て、こんなのボンドじゃないと一瞬思ったが、物語が進むにつれ、彼こそボンドだ!と全肯定できるようになった。
 以来、ダニクレ007は劇場に観に行く作品となり、ぼくのスチールブックコレクションに加わった。
 特典映像っぽい作品ながら、スタッフやキャストがスタジオ側の意向と真っ向勝負して作り上げた歴史がわかりやすく描かれていて、思いのほかいい編集だなと感心した。コロナ禍で上映が遅れに遅れ、番宣代わりにアップされたのだとしても、ダニエル・クレイグの抜擢から、最新作の最終カット後の涙の挨拶まで、現場の自信と執念が新生007を成功へと導いたのだとわかる記録のエッセンスがつまったいいドキュメンタリーだった。3.5点だけど、特典映像としては満点付けてるつもり。
 ただ今Apple TVで無料配信中。新作のネタバレもないから、鑑賞前の助走として見るにはもってこいな一本ですぜ、皆さん。

 さて、午後からIMAXでダニエル・クレイグの最後の勇姿を観てくるよ。
なべ

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