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旗本やくざ 五人のあばれ者のotomisanのレビュー・感想・評価

3.7
 暴れん坊将軍が賢君吉宗であるように、貧乏御家人あばれ者五人は一児の父親五人組であった。というわけで、育児に鎬にみんな懸命。チャンバラをやっているわけにいかないのである。
 ところで、直参の名誉誇らかな彼らであっても暮らしは千恵蔵家で三十俵五人扶持なんて貧乏すぎて嫁の来てもない。しかし、さすがに里見浩太朗だけは別で町人の娘と恋愛結婚。しかし、実家からは勘当同然に扱われ、さらに産後の肥立ちが悪く細君はあっけなく死んでしまい、食い詰めた外三人、山形、大坂、千秋とともに千恵蔵家に居候、こうして母なし父ばかり五人となる。
 そんな折、大身旗本連「鬼神党」との喧嘩沙汰を背負いこんだ彼らは、鬼神党に攫われた息子をめぐり大身56家相手の殴り込みに出る。そこでの山形勲今わの際、息子に投げた言葉の「俺のような男になるな」がやけに耳に残る。
 このように意外な人情噺である。ただ、父親五人といっても実父は里見と知れていて、里見の新しいパートナー候補は富士真奈美一人と話の振り幅も乏しいのですんなり結末に向かってしまいやや物足りない。かと思えば、千恵蔵は元老中の側女、蓮月院今日子とどんな関係に落ちていくのだろう?幕臣でも下士の千恵蔵と最高位老中の側女で隠棲中の蓮月院、身分違いといえどもどうせやくざな二人の事、掘れば掘りようもあったろうに。
 こんな時代は田沼政権の前日期、町人の力が財力だけでなく政治批判の声にも現れることが鬼神党といえど武家にとって恐ろしく思われるようになった時分である。五人組と鬼神党との確執の元ともなる仲蔵の定九郎演出の原型が雨中の千恵蔵の所作であったなんて辺りは一笑一笑。
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