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ザ・ヒューマンズのtoumeiのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・ヒューマンズ(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

観終わってすぐは「ん?どういうこと?えっ終わり???」となったけど、この絶妙な心地悪さ、気持ち悪さ、恐ろしさが好きだった。
ホラーは苦手なのに恐ろしいのが好きってなんか変な感じ。でも間違ってはいなくて、たぶんこういう感覚を日常で感じたことがあるから、それがすごくうまく表現されているところが好きなのだと思う。

すべての会話や、物音や、家の嫌な感じには、それぞれすごく意味があるようにも思えるし、全然意味がないとも思える。その感じが絶妙だった。日常って、そうだよね。
最後、娘が父に向き合って優しく送ろうとしてくれたのは救いだと思った。それがドアを開けた光でも象徴的に表現されていた。だけど、父は耐えがたい恐怖に打ちのめされて、別の扉を開けて奥へ行ってしまった。自分の罪と、失うものの多さ。立ちはだかる現実の重みに、心を閉ざしてしまったのではないだろうか。しばらく、もしくは最期まで、娘の愛情を受け取ることはできない未来を示しているように見えた。

なにかトリックがある話(例えば登場人物は人形で、巨大な人間に飼われているとか…)かと思ってドキドキしながら観て、結局何もなくて、特にないんかーい!ってちょっとがっかりしたけど、でも今あらためて考えるとそういう単純な話じゃなくてよかった。だからこそ面白かった。

作中でうつの話も出たけど、日常の中でホコリのように積もる恐怖や苦しみや怒りやモヤモヤは、これほどまでに強大で手に負えなくなることがある。生きることは、すべては、恐ろしい。娘のいる方のドアを開けられるかどうかに人の命はかかっている。
良い映画だった。
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