ノラネコの呑んで観るシネマ

アウシュヴィッツの生還者のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

アウシュヴィッツの生還者(2021年製作の映画)
4.2
久しぶりのバリー・レビンソン監督作はナチスの絶滅収容所を生き抜いた、ハリー・ハフトの物語。
モノクロで描かれる戦時中のエピソードと、戦後のアメリカでプロボクサーをしながら、生き別れの恋人を探すエピソードが並行に描かれる。
この人、あのロッキー・マルシアノとも闘ったボクサーで、収容所ではSS将校たちの賭けボクシングの試合に出ていた。
負ければ即処刑だから選択肢は無かったのだろうが、そのことで同胞から裏切り者扱いされたり、ほんと理不尽な人生。
彼がどんなことをしても生き抜く決意をし、PTSDを発症しながらもボクシングを続ける訳が、たった数ヶ月間の真剣な恋だというのが切ない。
エンタメ性は薄いが、ベテランらしく手堅く纏められており、世界史の中の個人史を知る作品だ。
ところで、同じような収容所のボクサーを描いた「アウシュビッツのチャンピオン」というポーランド映画があり、リメイクかと思ったら全く別人の話だった。
当時は腕っ節が強い囚人は、SSに駆り出されたのだろうな。
人間って残酷だ。