はるな

アウシュヴィッツの生還者のはるなのレビュー・感想・評価

アウシュヴィッツの生還者(2021年製作の映画)
3.5
今ホロコーストもの見るの皮肉だな〜気分としてはパレスチナ視点の作品見たいよな〜と思いつつ、戦争が起きている今をより深く理解するためにも、嫌になるほど観たホロコーストものをまた観るのもいいかもなと思い鑑賞。

いや〜ツラかった。誰かを見捨てたり、裏切ったり、殺したりしなければ生きられない日々の壮絶な苦しさ。そしてそのトラウマの中で生きていくのがどういうことかを痛いほど感じさせられる作品だった。

でもおかげさまで考えごとも捗った。

これまでさまざまな社会派作品を観てきて、もし私が窮地に追い込まれたらその時は誇りある選択をしたいと考えていたけれど、実際極限に追い込まれたら情けない選択しかできないかもしれないと考え直した。

死は苦しみからの救済かもしれないけど、その死に至る数分、数時間、数日、数週間…どれくらいになるか分からない時間を苦しみながら生きなければいけないとしたら、それはものすごく恐ろしい。

「俺は選択できたはずだ」と、自分のしたことを呪い苦しむハリーにミリアムがかけた「あなたに選択肢はなかった」という言葉が胸に刺さった。命や大事な人を人質に取られた上での選択肢は、あったとは言えないと感じた。

そんな状況がそもそも異常だけど、他人事ではないとも感じた。

世界は今も殺戮を止められずにいる。パレスチナもミャンマーもあげればキリがないほど世界中で人が痛めつけられてる。殺し合いしたい人なんていないはずなのに、一部の暴走によって大勢が不本意に殺戮され、させられるのを世界は止められない。皆が心をひとつにすれば何か変えられるかもしれないけど、それが可能になるなんて信じられないし、苦しんでる誰かを見つめ続けるのは苦しいし、皆れぞれに生活があるからだ。

日本が同じようにどこかの国から侵略されても、きっと誰も助けてくれないんだろうな。

この世界を少しでも変えるためには、本作みたいな芸術に触れてもらうのがいいんだろうけど、こういうのは苦しすぎて見る人を選ぶし、楽しんでもらいながら誰かの助けになるチャリティー的な仕組みとか、エンタメ要素もある社会派作品とかが増えればいいんだろうなとも思った。

自分もそういうものの一助になりたいと感じた。
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