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アウシュヴィッツの生還者のCINEMASAのレビュー・感想・評価

アウシュヴィッツの生還者(2021年製作の映画)
3.4
【1949年。アウシュヴィッツ収容所から生き残ったユダヤ人ボクサーのハリー・ハフト(ベン・フォスター)が恋人と再会するためにインタビューで凄絶な過去を明かす……】というスジ。実話の映画化である。

 ハンガリーとアメリカの合作で、収容所時代はモノクロ。劇中の現代(=1949年)のパートはカラー。

 監督は『レインマン』でアカデミー賞作品賞&監督賞を制したバリー・レヴィンソン。でもね、この人、アカデミー賞を獲った後、迷走低迷期に突入したじゃあないですか。『わが心のボルチモア』は良かったし、評判の悪い『トイズ』も僕は好きなのだけれど、『バグジー』あたりから凡庸になっちゃって。それでも『スリーパーズ』、『ワグ・ザ・ドッグ/ウワサの真相』あたりは悪く無かったと僕は思うのだけれど、『ジミー・ハリウッド』なんて、遂に日本劇場未公開&ソフトスルーになっちゃって。その後の『ディスクロージャー』はヒットしたけど、作品としては酷かったし、『スフィア』なんてのになると、「アンタ、ホントにダメな監督になっちゃったねえ……」って。2000年代だと、『バンディッツ』がボチボチ観られた程度で、他はもう全部ダメ。だから「バリー・レヴィンソンの新作!!」と聞いても、全く食指が動かなくなっちゃって。「いつまで【『レインマン』の~】って言われるのかしらねー?」って思っていた。

 けれど、今回は悪く無いっ!!!!

 収容所時代に、ナチス将校の飼いボクサーとして<負けたら射殺、勝ったらまた対戦>という過酷な状況で生きる事を強いられ、対戦の度に同胞の死と向き合わざるを得なかった非業なボクサー、ハリー・ハフト。彼を演じたベン・フォスターの大減量振り&熱演振りは演技賞物でしょう。主だった映画賞で候補入りすらしなかった事に驚かざるを得ない。それだけの化けっぷりを披露している。

 他の出演者に、ヴィッキー・クリープス、ビリー・マグヌッセン、ピーター・サースガード、ジョン・レグイザモ、ダニー・デヴィートら。(←「ダニー・デヴィ―トに似てるなあ~」と思って観ていて、エンド・クレジットで「あ、本人やったんや!」と驚いた次第。まだ現役なのね)

 ナチ将校を演じたビリー・マグヌッセンに注目! ピーター・サースガード、ジョン・レグイザモ、ダニー・デヴィートは名バイプレイヤー振りを発揮している。

 いささか冗漫な部分が有り、過去パートと現代パートの融合にモタついている部分が少し気になったけれども、充分に見応えの有るドラマでした。バリー・レヴィンソン、このまま弾みがついて返り咲いて欲しいなあ~♪
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