ぶみ

わたし達はおとなのぶみのレビュー・感想・評価

わたし達はおとな(2022年製作の映画)
4.0
おとなになっていくわたし達の、ほんのひと時の、だけど永遠のーあの時。

加藤拓也監督、脚本、木竜麻生、藤原季節主演によるドラマ。
妊娠に気づいた女子大生と、その恋人等の姿を描く。
主人公となる大学生を木竜、演劇サークルに所属する恋人を藤原が演じているほか、菅野莉央、清水くるみ、森田想、桜田通、山崎紘菜といった若手俳優人が登場、そこに片岡礼子、石田ひかり、佐戸井けん太といったベテラン陣が脇を固めている。
物語は、妊娠が発覚した主人公と恋人の姿を中心に描いていくが、喋らされているような台詞や演出が全くなく、あたかも隠しカメラをつけて隣人の様子を見ているかのようで、嫌悪感すら感じさせる日常感に溢れているため、終始何とも言えない感情に包まれることに。
また、実は時系列も前後しているのだが、着ている服や、喋り方等で観ている側に説明らしい説明をすることなく理解させる手法は、中々のもの。
主人公の住むアパートは、コンクリート打ちっぱなしで、階段を登った先にトイレがあるという、それなりの仕送りがないと住めないような部屋となっているが、それを佐戸井演じる父親のクルマを黒色の高級車(流石に車種までは不明)にすることで、暗に裕福さを示していたのも舌を巻くところ。
そして、圧巻の長回しを経て、心のざわつきが止まらないまま迎えたエンドロールは、これまた考えさせられるもの。
もはや、20代が遠い昔となった今、親の視点で観ることとなったが、今この時間も同じようなことがどこかで起こっているかと思うと、自分の子にはこのような話で悩んでほしくないと思うとともに、果たして自分は大人なのだろうかと自問自答することとなる良作。

ありがたいと思ってるよ、それで?
ぶみ

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