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わたし達はおとなのryotaのネタバレレビュー・内容・結末

わたし達はおとな(2022年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

映画じゃなくて、稽古場でのインプロ見せられてるみたいでした。途中何度も離脱しそうになりましたが、我慢に我慢を重ねてどうにかラストまで。大学生が住むにはありえない高級マンションで暗ーいところでパンかじってるラストがダメ押しのだめ押し。ATG映画を意識してんのかな?

えーっとなんだっけ、確かどっちが父親かわからない子供を妊娠してしまった女子大生と、もしかしたら父親かもって思った演劇やってる大学生が一緒に生活して一時は父親になろうかって決めるものの、やっぱりうまくいかないって話。これって話じゃなくて、ただのリアルな彼らの日常です。まあ、こんな日常は見る人が見たら非日常だから、こういう作品になってるのかもしれませんが、いずれにしても話らしい話はなくて、二人や彼らを取り巻く友人知人元カレ元カノらを巻き込んで、時系列を錯綜させて編集させた、奇怪な作品になってました。確かに、リアルなんだろうし見ようによっては独特な空気感もあるのでしょうけど、私には全く刺さらずでした。

思ったのは、冒頭にも書いたようにまるで劇団のインプロみたいだなということ。私は仕事柄よく劇団の稽古場にお邪魔して稽古を見学することがあるのですが、稽古の初期段階でよくインプロを役者達は行います。見てるとこれが実に面白くて、ああ、演技の原点ってまずはここからなんだなと痛感します。まだ何者でもないただの「人」が、自分の持っている感覚や知識、モチベーション、相手からの言葉の受け取りによって言葉を返したり行動してみたりします。そこには台本もなく、ただ架空の設定じみたものが設定されるだけです。そこから行われるのは、目の前にいる相手との「会話」です。その場で即座に「その人」になるわけだから、そこにはどうしたってその俳優の人となりが出るし、覚えた言葉ではないから当然自然なものな訳です。だからリアルそのものでかつ、それを観ているこちらとしては、退屈どころかおかしかったり見入ったりすることがよくあります。そう、台本に書かれたキャラクターになる前段階、まずは自分の言葉で自分の感情をきちっと相手に伝えるトレーニングから始めるわけです。どんなに経験を積んだ俳優でも、この行為は欠かせないと言います。この映画の印象がまさにそれだったのですが、でもね、それはやっぱり「作品」じゃないんです。あくまでもトレーニング。作品に昇華するにはそこから観客の心を動かし、感情を揺さぶるため、もしくは観客が求めるもの、観たいものを理解した上で作り上げられたものが「作品」だと思っています。もちろん、作家性の強い芸術作品なるものがあるのは承知しています。昔ATGという優れた芸術映画をたくさん制作した会社があって、そこには素晴らしい作品がたくさんありますが、作家が考えに考え、独特のセンスと思想を持って作られたものばかりで、マイナーではあるものの立派な商業映画だったと思っています。笑えた、泣けた、怖かった、自分の生活や人生と照らし合わせて興味深かった、ためになった、、、、等々、そういった刺激を受けたいから映画を観たい私としては、ちょっとこれはきついなあってのが、正直な感想でした。「リアルでとても良かった」「あの大学生の喋り方ムカついた」「今の若者の現実を見た」など、とても良かったと感じた方を否定するつもりは全くありません。私が好きな映画ではなかっただけです。

最後に、この作品がリアルな会話劇はよしとするも、高級マンションに住んでたりみんなろくなバイトもしないで楽しいキャンパスライフや呑み歩いたり、初体験や男の話ばっかりしてたり、シアターグリーンのBASEで大学の演劇サークル(?)が上演してたり(すごい)。自分のこの歳の頃のリアルと結構違ったので、それはそれでショックでした笑。
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