ひでG

わたし達はおとなのひでGのレビュー・感想・評価

わたし達はおとな(2022年製作の映画)
3.7
監督の加藤拓也さんってまだ30歳なんですね。高校生の時から演劇の演出をやって脚光を浴びていて、その後演劇界では賞を取るなどかなり評価されてきたとのこと。
そんな加藤拓也さんの長編映画監督(脚本)のデビュー作。
登場してくる人たちと監督自身もほぼ同年代という若さ!

加藤拓也さんはその後、昨年もう少し大きな規模で公開された「ほつれる」も撮っていて、順調に映画の世界でもキャリアを積み上げてきている。

「ほつれる」も本作と僅か2本だが、
撮り方、演技の付け方などがかなり独特。
役者は、まるでドキュメンタリーのように自然に、ありのままの会話のように、ボソボソと話す。

室内で主に男女2人で会話するシーンでは、照明は落とし気味で、2人が画面に収まるようにやや遠目から撮り、クローズアップが少ない、
そういう点では、舞台的なのかもしれない。

「ほつれる」が夫婦間の不倫を扱っていたが、今作は大学生の恋愛を描いている。

大学生の優実は、演劇青年直哉と恋に落ち、同棲を始めるのだが、やがて優実は妊娠したことを直哉に告げるのだが、、、

優実を演じている木竜麻生さんは、初めて見た。最初は素人さんかと思ったぐらい、
ナチュラルな立ち振舞いやセリフに(良い意味で)びっくりした。

直哉は、「名作には、季節か竜也!」の藤原季節。

この2人の会話がとにかくナチュラル。
特に喧嘩(言い争い)がキツいくらいにリアル。
個人的な思い出だが、僕も妻と(かつて💦)若い頃に口喧嘩した時、藤原季節のように、最初に防波線を張ってから、相手の非を責めるような言い方してたなあって、苦い過去のシーンが蘇ってきた。
「俺はいいんだけどね、、」
「別に気にしてないんだけどね、、」

自分は寛大で君の非も許す用意はあるんだよ、っていう善人ポーズ。
常に自己のテリトリーの範囲内で相手より優位に立った上で主張するようなトーク。

「ほつれる」の夫役田村健太郎さんもまさにそうだった。
「ほつれる」の夫も浮気されていたし、本作の直哉も自分の子じゃない可能性も一旦は呑み込もうとしたり、と一見優しい男性なんだけど、何だろう、あのいやらしさ。
加藤監督、「善人降り男」の描き方上手いね!

優実のまわりの男たちも本当にキモい。プレゼントのくだりなんて、ひょっとしてあんなこと独身時代にやっていたかも、、と
落ち着かない気持ちで観ていた💦

2人の出逢いから別れまでをあえて、時系列を崩して見せているあたり、劇映画初監督作品とは思えない技を持っている加藤拓也監督。
次も「善人ぶり男子」が出てくるのかな、

優実たち女子も含めて、「私達は大人」というタイトルは、皮肉たっぷりに感じてくる映画でした。
ひでG

ひでG