Asino

モンタナ・ストーリーのAsinoのレビュー・感想・評価

モンタナ・ストーリー(2021年製作の映画)
4.0
ヘイリー・ルー・リチャードソンはいつもいい。それを確認するために見たようなものですが、映画としても地味ながらとてもよかった。

姉と弟だけれども母親は違い、昔は仲が良かったけど姉が7年前に家を出てからは消息も分からないままだった。
モンタナの牧場の風景はひたすら美しいのだけど、今は昏睡状態に陥っている父親がすべての元凶で、姉エリン(ヘイリー・ルー・リチャードソン)が出て行った理由もそこにあり、弟カル(オーウェン・ティーグ)にも深い後悔がある。
あらすじから想定するよりも重たい話だったけれども、フラッシュバックシーンとかがないのは幸いだった。

背景には鉱山の公害問題と、その告発、鉱山がもたらしていた地元経済への影響なんかがあり、それがそのまま社会的弱者である先住民の生活に影を落としていることなんかにも触れていて、彼らの存在が透明化されていないのは良かったと思う。
父親の介護人がケニア人というのもとても現代的で、ちょっと「マジカルニグロ」的な扱いに思えなくもないけど、「マグノリア」のフィリップ・シーモア・ホフマンを思い出させられる感じだった。

自分の「身代わり」に愛馬を殺されたエリンが、その後「”さばく”ところから料理までやる」レストランの料理人になっている、というのはすごく象徴的なことなのだと私は受け止めた。実家に残されていた老いたもう一頭の馬への彼女の愛情と、一緒に飼われていた鶏を手早く絞めて料理するくだりはけして矛盾しないのだと思う。
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