りょう

よだかの片想いのりょうのレビュー・感想・評価

よだかの片想い(2022年製作の映画)
3.8
 顔に大きなアザがあるひとは、学生時代と過去の職場でそれぞれ1人ずついました。特に意識することなく接していましたが、いずれも自分と同性の男性でした。やっぱり女性となれば不要な気遣いにつながってしまうのでしょうか。顔の半分を隠して生活することが当然のようになったコロナ禍で、そもそも人間の顔にどういう意味があるのかわからなくなっています。
 とても興味深い設定でしたが、あまり辛辣な描写もなく無難な表現でまとめられていた印象です。原作はわかりませんが、主人公のアイコの顔だちが美形だから成立した物語だった気もします。ここまでの美人さんなら、あんなアザがあっても男性にとっては普通に恋愛対象になるでしょう。
 こんな表現はしたくありませんが、もっとブサイクな女性の顔に大きなアザがある設定なら、こんな簡単に映像化できなかったはずなので、あえてそこに挑戦してほしかったです。
 アイコと飛坂監督の元カノ城崎美和が撮影の合間に浜辺で会話するシーンが印象的でした。「彼にとっては映画が本命」(だから映画でヒロインやってる私が彼の本命)という勝利宣言のようなセリフが強烈でした。アイコも反撃しましたが…。そもそも2人の女性と関係している飛坂は、2人を会わせないように慎重に配慮すべきでした。映画のクオリティをコントロールすべき監督としてマネージメントがなっていません。
 物語は映画製作の行方も描かないまま結末を迎えてしまいますが、あくまでアイコの人生の背景や通過点でしかなかったという解釈なのでしょう。先輩のバーベキューのエピソードやエンディングの屋上のダンスとか、かなりベタな展開もありましたが、全体的には清々しい雰囲気でした。
 かなり撮影にこだわっていたのか、最近ではめずらしいフォーカスや採光の映像が好印象です。ところどころセリフにかぶる大音量の劇伴は蛇足でしたが…。
りょう

りょう