『作画崩壊という業(ごう)』
1979年に放送れたTVアニメ「機動戦士ガンダム」の一エピソード「ククルス・ドアンの島」の長編リメイク作品。
世界的に見てもこういう例はあまりないのではないか。
しかもややこしいのは原作をTVアニメを基にしながら、一部設定は監督、安彦良和のマンガ「機動戦士ガンダム THE ORIGIN(安彦によるガンダムのコミカライズ作品)」から採られているということ。
監督の発言によると、この「THE ORIGIN」の全話アニメ化企画はスタジオの決定により消滅しておりそれに代わるアニメ化作品ということらしい。
とにかく凄まじく作り込まれたアニメーションに言葉を失う。
ここで言う、作り込まれた、というのは新海誠的ないわゆる緻密さというよりは、キャラがよく動くフルアニメーションのようなアニメ。
安彦はあくまでも監督の立場なのでほとんど作画には関わらなかったらしいのだが、安彦の期待に応えようとするスタッフによる気合いの入った作画には恐れ入った。
歳の違う子供たちを何人も出し、そこにヤギまでしっかりアニメーションするという過剰さ。
モビルスーツはすべてCGで作られているのだが、言われないとそうとは分からないあくまでも自然な動き。
ネットでは常に「作画崩壊」の悪名のみで語られるのみだったオリジナルをここまで作り込むのかと、心から驚いた。
そもそもあの当時のTVアニメって作画的なケチなんてつけようと思えばいくらでもつけられたもんだったけどね。ことさらククルス・ドアンだけ作画崩壊してるなんて、観てる当時はあんまり考えなかったと思うんだけどな。
ただね。
水増しとは言わないよ。
ただ正味20分程度の一エピソードを長編化するのに、そこをふくらませるのか、という疑問はそこそこ募った。
大体ドアンがどうやってあの大人数の子供達とあの島へ来ることになったのか、を端折っちゃ駄目なような気がする。
いやなにせ、ドアンがどんなに長くあの島にいたとしても、長くて一年弱くらいなのだ。どうやってあの不毛の地であの大人数が生活してきたのか不思議でならない。
いやそこはいちいちくどくど説明しなくても察せよ、ってことなんだろうけどさ。
サザンクロス隊もホワイトベースの面々も頭数だけ揃えた割に個々の活躍はいまいちだったなあ。
ただ本作を極端に貶してる人は、あれは何なんだろとは思いましたよ。
あと興行的にあの特別価格ってのは何なの?
私入場者特典みたいなのも貰えなかったし、そこは割とはっきり頭にきたよ。
ククルス・ドアンがそこそこ当たったからって、アッザムとかザクレロとかブラウ・ブロでもう一本とかは止めた方がいいと思うよ(うっすら期待しているファーストファンの業)。
劇場にて。22.06.12
2022#013