カタパルトスープレックス

キリング・オブ・ケネス・チェンバレンのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

4.2
実際に起きた事件を元にしたドラマです。

舞台は2011年ニューヨーク州ホワイト・プレインズ。双極性障害を患う黒人男性ケネス・チェンバレン(フランキー・フェイソン)は、睡眠中に誤って医療用通報装置を作動させてしまう。安否確認にきた白人警官たちだが……という話です。実際の事件と同じ83分。

事件の根っこにあるのは人種差別。自分たちが上であるというアメリカ警察官独自の価値観。すごく気が滅入る話なのだけれど、こういう作品を作れるのもアメリカの強さだよなと思う。自国の悪い部分、誇れない部分を表に出せる。そうしないと良くならないから。一方で本作品はアメリカでも限定的にしか公開されていないという事実もある。この作品の存在自体が問題の根深さを物語ってる。

本作は事件を世に広めて考える機会を与えるというのも素晴らしいのだけれど、映画作品としてもとても良くできています。83分間、緊張が途切れない。ケネス・チェンバレンの人物像を描くために前日譚など加えることもできたでしょうが、あえてそうしない。事件が起きている時間の中でキャラクターを作り上げてしまう。

「社会的な意義はあるんだけど、映画作品としてはちょっと残念な出来だよなあ……」な作品が多い中、これはすごいことですよ。あえて緩急をつけず、ずっと緊張感のピークを保つ。その思いっきりがよい。

ジョージ・フロイドの事件の場合はスマホとSNSですぐに明るみに出て、事件を起こした警官は解雇されました。スマホが普及した現在だと表面化するのが早くなったけど、それでも同様の事件がなくならない。