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キリング・オブ・ケネス・チェンバレンのせっのレビュー・感想・評価

4.8

医療用通報装置を寝てる間に無意識に外してしまった黒人の精神疾患を持つ一人暮らしの老人が、安否確認に来た警官のドアを開けろとの要請に応じなかったが故に殺されてしまうまでの90分を描いた話。

正直序盤は、ドアを開けろとの要請に頑なに応じないこの老人に、そんなのちょっと顔見せればすぐ済むじゃん!と多少イラついてしまう。もはや最初、通報するかどうかの音声に全く反応せず眠りこける老人に「どんだけ深い眠りやねん!酔っ払ってんのか?」と、思ってしまい(すぐ分かるけど補聴器をつけずに寝てたから単純に聞こえてないだけ)、自分の中にも警官と同じような思考を持つ心があることを最初に分からせられる。

アメリカの人種的な根深い問題があるといえ何の罪も害もない人を、人は自分の勝手な妄想だけで危害を加えられることができちゃう。自分に害があるかの想像はいくらでも出来るのに、その人に寄り添って考えることがいかに難しいか。1度持った疑念はどんどん膨らみ、さらに頭に血が上ると冷静な判断が誰もできなくなり、誰の言葉も耳に入らなくなる。

まぁ、普通の人同士でもこうなのに、国家権力として常に武器を携帯している立場の人間が、相手と対等な立場で会話ができるなんて有り得ない。私でも家に警官が突然尋ねてきたらめっちゃ怖いよ。よく考えたら、今までの人生で、お巡りさんがいる安心!なんて思った事ほぼないよ(笑)基本的に、いた方が怖い存在だよ警察は。警官いると、何もしてないのに背筋が伸びる感じがあるよね。

そして、最後に流れる本当の音声がもう苦しいのなんの。現実のケネス・チェンバレンの声のが全然冷静で、劇中の方が精神疾患らしさを誇張してる。警官から脅されてるのに、かなり冷静に「やめてください」と言っているのを聞いて、警官と老人どっちのが精神疾患だよと思った。
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