ノラネコの呑んで観るシネマ

キリング・オブ・ケネス・チェンバレンのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

4.5
高齢の黒人男性K・チェンバレンが、医療用モニター機器を誤作動させ、安否確認に訪れた警官たちと押し問答の末に射殺された2011年の事件。
これはその顛末を、通報から射殺までほぼリアルタイム進行で描く実録ドラマ。
本来なら「大丈夫ですか?」「大丈夫です」終わる単純な話。
ところがこの街では、警官は住民全員が犯罪者だと思い、住民は警官は自分たちを守るのではなく、虐げる者だと思っている。
お互いに対する根深い不信が、絶対に家の中を確認したい警官と、絶対に入れたくない被害者の意地のぶつかり合いとなり、この悲劇が生まれた。
しかもチェンバレンには精神疾患があり、妄想的に警官を恐れているのに、警官には知識が無い。
中には露骨に差別的・暴力的な者もいて、ますます被害者を頑なにさせてしまう。
80分の間に加速度的に状況が悪化して行き、息詰まる緊張感。
エピローグで流される実際の音声が、今観たものは実際に起こったことなのだと、ダメ押しでメンション。
これも歴史上何度も繰り返されて来た、差別と分断の物語だが、明らかな違法行為が行われたのに、誰も罪に問われないと言うのは理不尽過ぎて凹む。
BLMが吹き荒れるに至る背景が見える、優れた一本だ。