もやし

キリング・オブ・ケネス・チェンバレンのもやしのレビュー・感想・評価

4.8
何だか今回思ったんだけども、映画にハマってから今までたぶん50本近くのいわゆる黒人差別映画を見てきて、いつからか単純な黒人と白人の対立構造という風に物語を捉えられなくなっていたことに気付いた。それは機微を見るようになったからなのか、それとも刺激により感覚が麻痺して鈍化したからなのか、そこはわからないけど。
もしこの作り手も、対立構造を描きたいだけだったとしたら、それだけ白人による黒人差別は何も変わっていないということの証明でもあるし、蚊帳の外の私からすると描きたいのいつもそこだけなの…?とつい思ってしまう。
もちろん作り手の真の意図は私にはわからんけども。



心臓病のケネスは就寝中に医師からもらったライフガード?装置を誤って作動させてしまい、応答がなかったので救急隊か警察隊を呼ぶということで、近くの警察官3人が家にノックをする。
ケネスは精神病も患っており、被害妄想も強い。それとは関係ないが過去の経験からも警察官には悪い印象しかなく、家に入れることにはかなり抵抗があった。

姿を見せてもらって安否確認できればすぐ帰りますと言う警官に、誤作動だったから体調は大丈夫だ、帰ってもらって大丈夫だ、という問答が30分近く続く。
正直いつの間にか俺も警官の視点で見てて、開けりゃ済むだけの話なのに何でこんなことで粘るんだ?と。でも人それぞれ事情はある。

段々とイライラしてきた警官達はここまで家に入れようとしないのは何か犯罪を隠蔽してるんじゃないか?という流れになっていく。
新米の警官が、そこまで無茶な邪推をしなくても… と言うも、黙れ! お前はここがどこだか知ってるのか? 犯罪の温床だぞ!

ここらに住んでる人からしてみれば言いがかりでしかないし、警官からしてみれば実際にここら辺で犯罪が多発しているのは事実であるし、そこら辺根深いよね。


この全ての最低の条件がピタリとハマり、映画になるほどの印象的な事件に…


もしこの条件がなかったら、とかもし他の選択肢を見出だせたら、とか考えてももうわからないし、もう起きてしまったことだし。
これは白人が全て悪いんだーで終わらせるのは絶対違うと思うし、やっぱりこの国の張り巡らされた蜘蛛の糸のような複雑な構造により起きた事件だと思う。


ケネスさんのスマホによる録画なのか、装置の録音によるものなのかはわからないが、映画とほぼ同じ展開を辿っているのがわかるようになっている。


最後は何だか、ただただ失意というか、そんな感想。
もやし

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