しゅうへい

KAPPEI カッペイのしゅうへいのレビュー・感想・評価

KAPPEI カッペイ(2022年製作の映画)
4.0
「終末の戦士による、最強のラブコメ」

1999年7の月。ノストラダムスが予言したこの時、世は荒廃し、秩序は乱れ、無法が支配する世界が訪れる。その時に備え、来るべき世紀末に人類を救うべく、己を鍛え上げる男たちがいた。ある日、強力無比な無戒殺風拳を会得した弟子たちを集め、老師は気まずそうに言った。「解散」―時は2021年。世界滅亡の時は一向に訪れる様子はなかった。これは時代に全く必要とされず、世界の救世主になれなかった男の物語である。

“エロ×ギャグ”を極めし若杉公徳が描く、世紀末に『北斗の拳』のような文明が崩壊した世界が訪れると信じ、ひたすら鍛えていながら活躍する場を得られなかった男たちと世間の常識とのギャップによって生じる騒動を描いたギャグ漫画。これでもかと畳み掛ける笑いの連打!奇想天外の爆笑エンターテインメント大作!

若杉公徳作品、奇跡的な実写化率。荒唐無稽な原作をほぼ忠実に再現してしまった。数ある作品の中で『デトロイト・メタル・シティ』が唯一再現可能かに見えた。しかし、その後『みんな!エスパーだよ!』がドラマ化され雲行きが怪しくなる。そして、今作『KAPPEI』の映画化。若杉作品全作読み倒す程のファンですが、これら奇跡的な実写化はもはや感動の域。クオリティなんて気にしない。イケオジ達の迫真の演技!よくもまあここまで全力でふざけてくれた!大満足だ!これでいい。もう何も言うことはない。

強すぎる哀しき救世主の遅すぎた青春、爆発!!
「終末の戦士」たちの配役100点満点。伊藤英明、大貫勇輔、山本耕史、小澤征悦。STRONG、COOL、PURE、VICTORY。まさに彼らだった。無知で未熟で純粋無垢な戦士たち。絵に描いたような平和な世界で目的を見失った彼らは何と戦い、何に生きるのか…。勝平は片思いに揺らぎ、守は失恋に身をくねらせ、正義は反抗期と思春期真っ只中、英雄は好きな人の為に自分を変えようとしていた。そして、恋バナで盛り上がる彼らの様子はまるで修学旅行の夜のよう。戦士達は失われた青春を取り戻す。

「悪者がいないんだったら、次は、自分が幸せになる番じゃない? 」

むさ苦しい筋骨隆々の童貞達の中に天使・上白石萌歌。上白石妹が一番輝いて見えた映画かもしれない。山瀬ハルが彼女で良かった。年の差20以上のおじさんが初恋の彼女を想い、苦悩し、振り向かせようと奮闘する姿は美しかった。ラブコメを超えたナニカを秘めた傑作。若杉先生の作品に“くだらない”なんて感情はもはや芽生えない。悪人が一人も出てこない世界に、誰も傷つかない純粋な笑い。愛おしくてキュンときて幸せになれる。

原作との違い→無戒殺風拳・鳳翔流を使う俊也の存在が抹消された。夜の街に出没する師範の姿がなかった。勝平がB'z「ultra soul」を熱唱するシーンがなかった。『KAPPEI』を118分に収めるのは不可能。下ネタを極限まで抑えた内容にもなった。悲しいがそれは仕方のないこと。なぜ公開日に観なかったのか。実写化に対する不安と嫌悪感に勝てなかった自分が悔しい。この世で最も嫌いな監督、福田雄一の作品とは天と地ほどの差。笑いと共感性羞恥が混在する世紀末。オチも完璧。ありがとう。最高の実写映画がここにありました。
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