シズヲ

フリーズ/地獄の相続人のシズヲのレビュー・感想・評価

フリーズ/地獄の相続人(1995年製作の映画)
2.7
ゴールドラッシュに湧く19世紀末のアラスカ、混血の先住民が鉱山の採掘権を貪る資本家一味を相手に逃避行を繰り広げる。いかに現代西部劇的な題材で(90年代だけど)、白人による先住民の土地への侵略と搾取が描かれる。雪原が舞台の西部劇は稀にあるものの、西部ではなく極寒のアラスカ州ノームを舞台にしているのは何だか珍しい(『アラスカ魂』とかあるけど)。あまり深く掘り下げられる訳でもないけど、“白人と先住民”だけでなく“アメリカ人と移民”という形で二重の制圧構造が見られるのも印象的。脚本にセルジオ・ドナティが関わっててちょっと驚くが、実際どことなくマカロニ・ウエスタンのようなこじんまり感がある。『地獄の相続人』という冴えない邦題もある意味でマカロニ的。

吹雪が荒れるアラスカでのロケーションは実に寒々しくて印象深いし、馬ではなく犬ぞりによって追撃をする絵面も通常の西部劇では見られないので新鮮。とはいえ肝心の演出はどうにも凡庸で、何処となくB級的な安っぽさが否めない。雪原という映像のインパクトに頼っているせいかアクション的には然程面白味が無いし、良くも悪くも小規模に纏めているせいかテーマに対する深みや見識も感じられない。それゆえ「土地は所有するものではなく敬うもの」という総括っぽい独白もそんなに響いてこない。終盤に明かされる悪役の秘密ももうちょっと面白く活用できそうだったのに、結局あんまり掘り下げられなかったのが惜しい。

「悪党一味になんか見覚えあるオッサンいるなあ」と思ってたらバート・ヤングでこれまた驚かされる。ふてぶてしいアウトローぶりが何気なく印象に残る。
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