Kaji

サイボーグでも大丈夫のKajiのネタバレレビュー・内容・結末

サイボーグでも大丈夫(2006年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

「人間ではない三部作」は「渇き」をすでに観ていました。


渇きはヴァンパイアのカップルがどんどん狂っていき、嫁が殺人を繰り返すので旦那の方が太陽に当たるところへ連れ出し心中する話でしたが、テーマは愛でした。
パクチャヌク変態だな、と思うのは、「愛は何を備えていればそう呼べるのか」みたいな問いに、欠落の方ばっかり出してきて、欠陥はあるけどこれも愛っていうんですかね?。みたいなズルい問いを投げてくるように思えました。
大好きです。
 今作はスパイクジョーンズやカウリスマキ、バートン、ウェスアンダーソンみたいな空想と見せかけてエグい批評だったり、淡々と狂ってる人を置いていく作風アンド綿あめカラー、トンデモ絵本のキャラみたいな登場人物達で物語を造形してあり、アメリとかを上辺だけで褒めてた意識高い系のライト映画ファンの心を射止めた事でしょう。さすがです。
工場労働での自殺未遂、パステルトーンの精神病院、不食、機械とのシンパシー、おばあちゃんの入れ歯、(入れ歯や整形も人体の変形ですよね)
に加え、ピ様が演じた男の子は「軍隊でレイプされた」と虚言癖の患者に言わせる。
すげえな。マクガフィンの色が濃い笑


本題ですが、この映画のテーマは機械と人間をひとりの女の子に同居させて、「人間性の条件」を描いているのかなと思いました。
不食って言うのは、生命維持の放棄行為とも考えられるので、この子は自分が機械で人間ではないと思っちゃってるわけで。
でもその子になんとかご飯を食べさせようとピ様1人奮闘。糸電話からのヨーデルのとことか愛溢れてます。
 明るいタッチの精神疾患世界の中で、ギリギリの死生感と精神をテーマにするあたり、やっぱりパクチャヌクの変態さは作家性なのだなと力強い表現力を感じました。
おばあちゃんが「存在の理由は、、、」から聞こえないようにするあたりわかりやすい演出でした。これがテーマなんだな。っていう。

「靴下だけか?」って、この映画の中では愛の告白の言葉だと思えました。
一つ残らず服を脱ぐ。
二人が恋人としているなら、一切の社会の事を捨てて(どうせ僕らは狂ってる)、人間に還ろう、みたいな、ね。
パクチャヌク版アダムとイヴなのかな。

冒頭、ネームタグが「パクチャヌク」から「チェヨングン」に差し代わるクレジットのギミックや、自殺未遂シーンで手首に巻く絶縁テープに「パクチャヌク」の文字。
こういうお洒落なギャグやラストの壮大なワルツ。くー!さすがです。
Kaji

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