ぶみ

マニアック・ドライバーのぶみのレビュー・感想・評価

マニアック・ドライバー(2021年製作の映画)
3.0
この獲物、俺と死んでもらう。

光武蔵人監督、脚本、木村知貴主演によるドラマ。
最高の生贄と呼ぶにふさわしい女を殺し、自分も死ぬことを唯一の望みとしているタクシー・ドライバーの姿を描く。
主人公となるタクシー・ドライバーを木村、タクシーに乗車する客等で古川いおり、佐山愛、卯水咲流、きみと歩実、園部貴一、近藤善揮、木村圭作が登場しているのに加え、特別出演として、最近、独特の存在感を放つ脇役で姿を見ることが多い川瀬陽太が終盤に登場。
物語は、過去にあった出来事から絶望し、最高の生贄を殺すことを夢見る主人公が、実際に手を染めていく様が描かれるのだが、ほとんど予備知識なしで観始めたところ、前述のキャストにあるような女性陣が所謂セクシー女優であることに気づかず、冒頭にある謎の妖艶なシャワーシーンで面食らったものの、それも後から納得した次第。
以降、要所要所でエログロ(と言ってもかなりエロ多め)描写があるため、リビングで大音量で観るには注意が必要。
そもそも、本作品を何故観ようとしたかというと、主人公が駆るタクシーが、日産のフラッグシップモデルとして長年君臨し、なおかつ1973年から1990年まで17年間フルモデルチェンジしなかった二代目プレジデントの中でも、最高級グレード「ソブリン」であったこと。
私が幼少の頃、小学校への通学路にある邸宅の車庫に黒いプレジデント・ソブリンが入っており、子ども心に、その何とも言えない風格や威圧感を感じていたところであり、実際には、運送会社社長の家であったことが判明し、妙に納得したことが昨日のように思い出されるとともに、本作品の車内でも、後席中央のバックレスト上にオーディオかエアコンのコントロールパネルらしきものがあったことに妙にテンションが上がった次第。
閑話休題。
本作品は、公式サイトにも過去の名作へのオマージュを捧げつつ、「ジャパニーズ・ネオ・ジャーロ」となる恐怖を提示したとあるように、低予算ながら独自の様式美が散りばめられている仕上がりとなっている。
狂気のタクシー・ドライバーで真っ先に思い出すのは、マーティン・スコセッシ監督の『タクシードライバー』。
ロバート・デ・ニーロ演じる主人公トラヴィスが、鏡に向かって「You talkin' to me?」(俺に用か?)と言う名シーンがあるのだが、本作品では、思い切り「俺に用か?」と主人公が言うため、もはやオマージュの域を超えていたのはご愛敬。
狂気を描いた不条理スリラーかと思いきや、思いのほか、物語にツイストが入っていたため、エンタメ度もそれなりに高められており、低予算のエロエロエログロ作品として、普通に楽しめた珍作。

殺人という事象においても、その価値観は、普遍的ではない。
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