バリカタ

茶飲友達のバリカタのレビュー・感想・評価

茶飲友達(2022年製作の映画)
4.0
意義ある作品、そして磯西真喜さんが素晴らしい!

出演されている俳優陣の素晴らしい演技を楽しめる1作です。
特に、磯西さんの演技が素晴らしかったです。多分舞台を中心にご活躍されていらっしゃる方なのではないでしょうか?

さて、本作。
想定と違っていたのは「家族」とは?というテーマが下地にあったことでした。ちょいとその辺りの描き方にチープ感がありました。お話の落とし所がよくある展開ということと、うーむ、そんなに簡単な話じゃないんじゃない?わかりにくいから家族なんじゃ?って思っちゃったからです。だから、家族とは?を描くにはちょっと無理があった気がします。

それよりも何よりもこの商売に従事する高齢者、利用する高齢者の「根っこ」を掘り下げて欲しかったと思います。なんともステレオタイプな人物描写ばかりで、どこか「私には起こり得ない世界」って見え方がしちゃいそうな気がします。清廉潔白最高!な日本では「必要悪」なんて絶対に認められないし、そもそも「必要悪」なんて言ったら最後な感じがします。

本作で描かれる「売春」は犯罪です。
けどね、手に入れなければならないことってあると思うんです。厚生省が認可していない薬や手術を高額で手に入れる人のように、例え違法行為でも支えがないと歩けない人がいると思うのです。そんなとっても重要な提言を本作はしているのではないでしょうか?本作に登場する高齢者たちは、きっと僕たちの明日のような気がします。誰にでも老いが来て、老いによる環境変化と人間という生き物のなんらかの欲求のせめぎ合いがあるはずです。

この方法を選択するしか埋められない状況があるという現実と、これからこの現実が多くの人の未来になること知り、どうすれば良いか?を多くの方々が考えなければならないのでは?と思うのです。そのためにも本作が多くの映画館で上映され多くの方に見ていただく必要性はある気がしますし、そこに本作の存在意義があると思うのです。

「必要悪」ってなんだろ?必要ならそれは果たして「悪」なのだろうか?

物語としては少々残念でしたが、製作された意義を讃えこの評点です。