あき

茶飲友達のあきのレビュー・感想・評価

茶飲友達(2022年製作の映画)
4.7
この映画を観ながら、「万引き家族」(2018)を思い出していた。
社会のレールからこぼれ落ちてしまった人のセーフティネット。
ぼくはマナが目指した世界にすごく感情移入したし、でも「万引き家族」同様、そこでしか生きる場所を見つけられないのに“遵法“という視点から裁かれるしかない人たち。
こぼれ落ちたくなくても落ちてしまう人をどう救うのか。
“「正しい」だけじゃ「幸せ」になれない“。
でも法治国家としては違法は罰せられるしかない、その、矛盾ではないのに矛盾を感じてしまう違和感。
ぼくは最後まで、マナの目線にいた。
そして、この作品で監督の描こうとしたラストに拒絶感を持ってしまっている自分がいた。
歯車が狂い出した途端に蜘蛛の子を散らすようにバラバラになる“ファミリー“。
ましてや、それまでのことがなかったかのように責任転嫁する無責任。
一方でずっと拒絶していた家族からの心の抱擁。
人の最後のセーフティネットは“他人“ではなく、“家族“なんだよ、と訴えかけてくる終わり方。
そんなもんかな?そんな綺麗事かな?ってぼくは気持ちがザラついた。
取調室で女性捜査官の言葉のひとつひとつがいつも“安全“な場所にいたことしかない人の、“堕ちたことのない“人の綺麗事のセリフにしか聞こえず、
でも、ラストに向けて自分が築き上げてきた世界が崩壊していくのを目の当たりにしたときのマナの表情。
お母さんにラストで言われた言葉を耳にしたときのマナの表情。
マナが精神的に壊れていくのが手に取るように見えて、“間違ってなんかないんだよ“って自分に言い聞かせるように心の中でマナに語り続けていた。
久しぶりに、涙が後から後からこぼれ落ちる作品を観た。
あき

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