近本光司

茶飲友達の近本光司のレビュー・感想・評価

茶飲友達(2022年製作の映画)
3.0
あまり好みではないが、うわさに違わぬ力作であることは素直に認めなければならないと思いながら、最後の渡辺哲のさみしげな後ろ姿を捉えたショットを観ていた。高齢者専用の売春倶楽部という設定の着想があったとして、ここまで多種多様な人物をあざやかに立ち上げたことは見事というほかない。実母との軋轢からよそに理想の家族像を希求するマナ、最期を看取った父のネクタイで自死を試みようとしていたマツコ、不遇な幼少期の反動で母になることを夢見たチカ(海沼未羽という役者ははじめて観たが、彼女の芝居はとてもすばらしい)。「ティー・ガールズ」たる老齢の売春婦たちも、そこで働く若者たちの肖像も、脇役とはいえかなり細かく描きこまれているのだが(パン屋の息子の彼もとてもいい顔をしていた)、そのぶん詰め込まれすぎのきらいは否めず、どうしても135分というランタイムは長く感じてしまう。終盤のスカイツリーの聳える隅田川近郊を臨むショットに、さまざまなニュースが読み上げられていく。あれだけこってりとしたドラマを観させられた後にこの顛末もまた日々報じられる事件のひとつでしかないというスーパーロングショットの詩情には唸らされた。しかもそれが洗面台に並ぶ色とりどりの歯ブラシのあとに用意されているのだから、なおさらタチが悪い。『ソワレ』が蛇蝎のごとく嫌いだったということを忘れないでおかなければならない。