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茶飲友達のumisodachiのレビュー・感想・評価

茶飲友達(2022年製作の映画)
4.3


実際に合った高齢者売春クラブを題材にした作品。

新聞に「ちゃのみ友達募集」という広告を出し、所属する高齢女性に売春をさせる組織を運営しているマナ。癒しや発散を求める男性と、自立したいという思いと事故承認欲求を満たせる女性たちのマッチングは上手くいっていた。マナは持ち前の洞察力で女性をスカウトし、彼女たちと疑似家族のような心の絆を築いているように思えたが……。

社会的な問題提起という意味で、非常に意欲的な作品。売春という手段ながらも、現代において孤独を埋めることの難しさや、そこに救いを感じる人々の真実といったものを炙りだす。それだけではなく、あくまでも犯罪行為であり、埋められた孤独や、築かれたように見えた絆が脆くも崩れ去る様子も結構冷酷に描いている。

秀逸なのは、マナを演じている岡本玲。美しく聡明な女性でありつつ、どこか影がある雰囲気や、ほんのちょっとだけ堅気ではないというニュアンスを感じさせる非常に解像度の高い芝居だった。賢く、優しく、包容力がありながらも、どこか危うさや不安を含んでいるという彼女のアンビバレントなキャラクターがあるからこそ、この作品が持つ多角的な問題提起を実現できたのではないかと思う。

ビジネスがうまく回り、大金を得た女性たちも生きる活力を取り戻し、人間関係も良好で……と、良い循環ができているところに来ての崩壊という構成は非常に巧み。ほんの少しずついたるところから綻びが見え隠れしていたのを、一気に叩き潰すようなショックが彼らを襲う。マナが追い求めた「絆」がいかに脆く、表面的なものでしかなかったのかを痛感させられる。

でも、だからといって血縁のある家族だから本物の「絆」が生まれるかといえばそうではない、という点も本作はじっくりと見せる。孤独を埋めていただけのお前らのビジネスは、所詮はまやかしで犯罪なんだ!と簡単に断罪することはできない、重層的なテーマ設定が見事だと感じだ。

だからこそ、ラストシーンには少し疑問。あれだと、結局のところ血縁関係に回収されてしまうのか?という解釈の余地を与えてしまうのではないだろうか。さすがにそんな結論ではないだろうが、テーマを広く設定した分、もうちょっとハッキリとした結論への意思表示を期待しただけにやや消化不良だった」(私が読み取れなかっただけかもしれないが)。
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