友二朗

猫は逃げたの友二朗のレビュー・感想・評価

猫は逃げた(2021年製作の映画)
4.5
「二つの恋のようなもの」

最高の修羅場。
怒涛のワンカット長回し。

世界にまた一つ、素晴らしい作品が誕生した。期待を裏切らない今泉・城定監督。なかなかハードなプロジェクトだったと思うがファンにとってはこれ以上ないプレゼントになった。

やはりまず言いたいのは猫が可愛い。
特にカンタの背中のラインは完璧である。

暖色な空気感の中、繰り広げられるカオス。

グッダグダな4人の恋愛に対して『猫は逃げた』つまり皮肉のような、訴えのようなテーマになるのかと勝手に想像していたが、個人的にはカンタはあくまでカンタであり、それぞれ淡々と生きている。猫に感情移入して人間を俯瞰するのではなく、共通の存在として位置されているだけ。

面白いのは4人の中心にカンタが位置しているのではなく4人の遥か横にカンタがいるのだ。振り返るとこの泥沼恋愛×猫のマッチは不思議で何故画面に収まっているのかよく分からない。

  ◯ ◯
        ◯
◯ ● ◯ → ●
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カンタに意識を注いでいるようで言動からは人間の意地や汚さばかりが出ている。それに振り回されるカンタ。あれごめんちゃんと皮肉やったかも。

でもなんてゆうんやろ、別に『こいつら悪やな』とかゆう感情にはならず何故か腑に落ちる。これは観客として観ているからだけなのかも。いやそうやな。普通に観てて楽しかった。

思いもよらない展開にはワクワクした。見事に右肩上がりの作品。

文の冒頭でも言ったが修羅場のワンカット長回しなんて最高of最高。よくぞやってくれたという気持ちでニヤニヤしながら観てた。台詞がリアルすぎて良かった。男勢の口数が減る感じ、女勢のキレキレ具合、味方する側がコロコロ変わる感じ。2011年の『Carnage』を少し彷彿させた。

亜子の気持ちに角が取れていく過程できっかけとなるのが猫を抱く広重の写真だったり、シンプルにカンタだったりする訳だが、個人的にグッと来たのは広重が亜子の脚のつりを治すシーンである。事前に松山で土台は作られていたが、あの感情を表現するのは見事。

2人のルーティンだったり、ふとした時にいつもする事だったり、2人にしか分からない行動や仕草が別れ際になって涙腺の引き金になる。これは自分も何度も体験したがあの抑えきれない感情はなんだろう。色んな気持ちが光の速さで心を突き抜けていくあの瞬間。

亜子と真実子の演技は素晴らしかった。
真実子の酔っ払った時や甘える時の何を言ってるか聞き取れない感じ。亜子の涙を抑える表情、声。素直に見入ったし感動した。

真実子めっちゃ良いキャラ。
なかなか大胆な所はあるが魅力的。歩道橋からハリボー投げるシーンおもろすぎやろ。なんでこんなん思いつくん。

終始bgmが良かった。
主題歌「don't cry」も良い。

広重はちょっとクズいなー。
でもこのクズさと人の気持ちの凸凹がたまらんから映画館に行く。そして満足する。

カラオケ出て公園でタバコに火つけるシーン良かった。というかこの一連良かった。亜子が切ない。その表情と電話に出る声のトーンも完璧。

ミミのラストカット切ない、
ここほんま切ない。

多摩市の風景まじで普通で最高。

オズワルド伊藤の劇中映画の声、瀬戸康史なのじわる。

なんか何書いたかよく分からんけどとにかく楽しかったです。

最後に一言。 『 人間 < 猫 』

読んでくれてありがとう🐈

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「え、じゃあ、
 猫のせいで離婚できないってこと?」

「松山くん原稿!」
「何しにきたのよ」
「何しにきたんすかね」

「おいしい?」
「うん、おいしいよ」
「カンタに聞いたの」

「あとセブンスターひとつ。
 すいません、やっぱりタバコいいです」

「この話題自体めんどくさいから避けてる感じ」

「めんどいでしょ普通に」

「ごめん、二度としないよ」
「え?なんで聞いてもないのに言ったの?
 なんでわざわざ言ったの?」
「なんでって、隠してるの辛いし。
 亜子冷たいし」
「じぶんが辛いから言ったんだ
 自分のために言ったの?」

「そんとき飲んでたコーヒーがぬるくてね
 なんか冷めちゃってね」

「いや俺たちはあれじゃないですか
 元気出してほしくてってゆう
 そうゆうあれじゃないですか」
ほーん。

「何?同情してくれてるの?」
「発情してるだけです」
「アホ」

"アガペーからエロースに進化した"
オズワルド伊藤のキモ映画好き。

「プラトニックラブとは
 "1人を愛するよりも大切なことがある"
 と説いている」

「アガペーからエロースに進化したから?」
「いやー嬉しいなあ
 そこ理解されたの初めてかもしれない」
笑笑

「ノープラン、もうパンツすらない」
「そうか、そう言う意味でもノーパンなのかも」
どういう意味やねん。

「夫婦とか結婚とかを前提から否定しているのがもう古いんですよ。そういう議論ってもう一回りしてて、結婚に憧れる人も増えてると思います。要は選択肢が増えればいいだけなんですよ。私は結婚願望ありますし」

「じゃあ、今日はサヨナラ。
 美人の奥さんによろしく」
「おい」

「だよねー、声が違うもん。
 ねえカンタ知らない?
 私アナタと駆け落ちしたのかと思ってた。
 知ってたよ、付き合ってたの。
 だから窓も開けてた。
 アナタも寂しい?」

「ねえ、やっぱいいや」
この台詞を入れるのはセンスが必要。

「ダメだよちゃんと面倒みないと
 預かり物なんだから」
真実子狂ってんわ。

「ジャーナリスト根性なめんなよっと」
真実子狂ってんわ。

「カンタじゃないっすかその模様」
「いやタマです」

「2人が別れれば返します、奥さんのほうに」
「これ誘拐ですよ?」
「最悪でも窃盗罪です
 刑法上愛玩動物は物品ですから」
それ言うのやめて〜。

「俺お茶が趣味で、
 アレルギー性鼻炎に効く茶葉を
 ブレンドしました」

「生理が来ないって聞いて、就職も迷ってたし、タバコも辞められなしさ、それで最悪だけど、ほんとに最悪だけど、全部捨てて逃げちゃおっかなって」

「どっちが良かったは分かんないけど
 私は結婚できて良かったなって思ってる」
この涙含んだ声感激した。

「ダメだなこの脚、運動不足だわ」


「ヒロやっぱうまいねー」
ここほんと良い。

「変態夫婦、白昼のノーパン不倫
 どうです?」
「いやどうです?って言われても」

「俺、本当は小説家になりたかったんだよな」
「私だって本当は写真家になりたかったんですよ」
「俺はさ、漫画家になる夢を叶えた妻に嫉妬してんだよ、どっかで」
「私はアナタを手に入れた奥さんに嫉妬してます、どっかで」

「ねえ、説明して、まじで」
「説明も何も、タマです」

「想像するだけで心がポカポカしました」

「でも通ってもないし編んでもないんでしょ?」
「でもしようとは思ってましたから!」

「これは笑えるわ、令和入って一番笑った」

「てかジェンダー論語っちゃいけない場なんてないから」
パンチライン。

「ちょっとなに!?ハモんないでよ!
 仲良しアピール?」

「やっぱり2人はお似合いですよ」
「ちょっとなに?」
「だって俺ハモれないもん」

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一つ言うとしたら一番最初キスシーンが少し長すぎた。別に長いのはいいが映像としてそこに意味を感じなかった。ここにタイトルバックを使って切るための「長いよ」の台詞でいいんじゃないかな。人の長いキスと『猫は逃げた』で皮肉が効いてて面白いと思うし。ごめんなさい勝手なこと言ってます。黙りますね。
友二朗

友二朗