大道幸之丞

猫は逃げたの大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

猫は逃げた(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

傑作です。

本作は城定秀夫が脚本で、今泉力哉監督だが、『愛なのに』は逆に今泉力哉脚本、城定秀夫監督という企画で「姉妹作」という関係。どちらもR15+指定なのでそこそこ見ごたえあるセックスシーンがある。

——離婚をきめたものの愛猫「カンタ」の親権をめぐって結論でずの漫画家亜子(山本奈衣瑠)とジャーナリスト広重(毎熊克哉)。

稼ぎは連載も持つ亜子の方がよい様子。広重は未だに小説家への夢が捨てられない故か腰を据えて仕事に取り組めていない優柔不断さがある。

そしてそれぞれ恋人がいる。先に浮気したのは広重で相手は同じ編集部のカメラマン沢口真実子(手島実優)。亜子はやや広重への意趣返しで掲載誌担当編集者の松山俊也(井之脇海)。

猫の親権問題で離婚協議は小休止状態の二人だが、ある日そのカンタが行方不明になる。必死に亜子と広重が探索するも見つからない。

——実は二人の離婚問題に業を煮やした真実子が事態を打開しようとカンタを誘拐し自宅に隠していたのだった。誘拐時には俊也に見つかり詰問されるが、目的では共感するもので俊也は共犯化する。

しかし仕事中に真実子のバッグに猫の毛がついており怪しんだ広重が真実子の部屋に踏み込むと果たしてそこにカンタがいる。追求する広重に対しても「タマです」ととぼけるも、二人が言い争いしている間に開いた玄関の扉からカンタは逃げてしまう。

一方俊也は良心の呵責に耐えかねて亜子と性交の最中に泣き出してしまい。隠していたカンタの事を打ち明ける。

最後は四人で話し合いになる。実はカンタを探している経緯の中で亜子と広重はほとんどよりが戻ってしまっていて、呼吸があっている。真実子の策は事態を思わぬ形で解決に向ってしまったのだ。

半放し飼いだったカンタには彼女がいて、二匹の間に4匹の子猫が生まれた。それを4人がそれぞれ引取る。帰りに4人で記念写真を撮る。先月から真実子と俊也が共に暮らしている事もわかる。これですべてが解決している。

——脚本が城定秀夫であっても、丁寧なキャスティングとコーヒーカップ1つに至るまで、それぞれ個人の生活感がにじみ出るセット、そして何より大切にされる登場人物の会話と、まごうことなく今泉監督作品である。

姉妹作「愛なのに」とは感触が違うが、傑作で是非オススメしたい作品だ。