Omizu

猫は逃げたのOmizuのレビュー・感想・評価

猫は逃げた(2021年製作の映画)
3.7
『愛がなんだ』今泉力哉監督、『アルプススタンドのはしの方』城定秀夫脚本という『愛なのに』の逆の布陣でつくられた作品。

なるほど逆だとこうなるかという感じ。個人的には『愛なのに』の方が好きだがこれも十分面白かった。

城定さんは結末を爽やかにまとめる作風なので本作もそうなっているし、今泉作品にしてはセックスシーンが多く生々しいのは城定さんのテイストだろう。

城定さんのスマートな脚本と今泉さんの会話劇の妙が詰まった一作。ではあるけど、結末が収まるべきところに収まってしまうのがもったいない気がした。

やっぱり「そこ!?」というところに持っていかれる今泉脚本、端正でスマートな城定演出という『愛なのに』がベストマッチなんだと思う。

本作は恋愛群像劇であり紛うことなき猫映画でもある。猫を撮るってたぶん想像以上に難しいと思うんだけど、今泉監督はあざとくなく自然に猫を撮ることに成功している。「カンタ」というネーミングセンスも絶妙。

最後『街の上で』にもあった登場人物総登場というアゲ感はあったものの、少し会話が上滑りしている感は否めない。ハモるなよ!は笑ったけど。

何気に毎熊さんのこういう役って珍しい?いや、こういう浮気男は珍しくないけど、彼の視点からというのはあまりなかったかも。

初主演となる山本奈衣瑠さんは役には合っているけどちょっとボソボソと喋りすぎて聞き取れない箇所があったのが残念。演技は上手いけど。

今泉さんの脚本は色んな愛の形が曲がりくねって交錯しながら予想もつかない方向へ持っていかれるけど、城定さんの脚本は色んな愛の形が並行してそこにあって決して交わらない感じ。それはそれでいいんだけど少しつまらない。

面白いし今年の日本映画ではベストに入るけどもう一つパンチが欲しかったというのが正直なところ。
Omizu

Omizu