S3RI6

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービーのS3RI6のレビュー・感想・評価

4.5
世界的大人気ゲーム「スーパーマリオ」の3Dアニメ映画。制作はIllumination。

最初に書くが、本作はいわゆる普通のエンタメ映画としての水準で見ると正直微妙な映画である。
実写映画「スーパーマリオ 魔界帝国の女神」のほうが興味深いと思えるくらい、深みもヒネリもなく第二幕以降は飽きるギリギリラインで物語が進み、凝ったアクションと見てる側のキャラクター愛だけで最後まで乗り切っている印象。

これだけだと駄作なのでは…と思うかもしれないが、マリオの映像化作品としてはほぼ完璧と言っていい。

その理由は、ゲーム原作でこれほどまで原作愛に溢れ、作り込まれた作品が他にないからだ。度を越したおもてなしである。
ゲーム原作の映画は特にキャラクターが変になりがちなのだが、本作の登場人物は誰もが思うそのイメージからほとんどズレることがない。
これは革命的であり、これまでのゲーム原作映画と大きく異なる。

また本作の魅力は、マリオのこれまでのゲームシリーズ、派生作品も包括した世界を映画に落とし込んだことだ。

よろずやチコのイカレ具合もそうだが、最初に登場する飛行要塞が迫ってくるときにかかるBGMが「スーパーマリオブラザーズ3」飛行船のBGMアレンジなど、小ネタも上手く拾っている。
驚くのは、あの実写映画すらネタにしたり黒歴史にしたりせず物語のギミックとしてオマージュしているところである。
本作の懐の広さがとても良い。

たしかに本作はマリオのファンでなければややきつい映画かもしれない。
しかし、今は1993年ではなく2023年だ。世界中の老若男女がマリオを知っている。
オーディエンスの評価が高いのも納得である。


余談。

映画を観るまで、私はすっかり忘れていた。

子供の頃、私はマリオが大好きだった。
休日しかゲームを遊ぶことができなかったためファミコンはとても特別なものだった。ファミコン世代ではないが、ゲーム機を買ってもらえなかったので古いゲームしか遊べなかった。

特にお気に入りだったゲームは「スーパーマリオブラザーズ3」。
グラフィックスやデザインが前作と比べてリッチになり、タヌキマリオなどの変身要素、隠し要素がたくさんあった。
飛行船、戦車ステージなど、これまでどこかポップだったマリオの世界観にダークな一面が出てきたのも魅力的だった。

「スーパーマリオ 魔界帝国の女神」もVHSで観た記憶がある。
変な映画だと思ったが、子供ながらに大人の事情を察して楽しんでいた。
マリオがボム兵を置くシーンは好きだったし、クッパが人間を猿に変えるシーンは怖くてトラウマになった。

それから月日が流れ、自分の中でマリオがどこか遠い存在になっていたのかもしれない。

本作はそれを思い出させてくれた。
マリオを何度も遊んで、変な実写映画も繰り返し楽しんでいた子供の頃の自分がどこか肯定されたように感じた。
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