春とヒコーキ土岡哲朗

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービーの春とヒコーキ土岡哲朗のレビュー・感想・評価

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あまりに期待通りのマリオワールドが広がっていた。

マリオの嬉しい完全再現。横スクロールで見せるブルックリンの街並みがマリオのステージを再現してるところで、地に足のついた日常から楽しいゲームの世界まで連れてってくれるのを証明されてワクワク。クッパのしっぽを掴んで投げる光景はマリオ64をやっていたのを思い出して、各自が持つゲームの思い出も込みでクライマックスに連れてってくれるんだと感激。モンキーラップが流れ、ディディーコングたちもいる。マリオカートもパーツのチョイスからレインボーロード、緑こうらと青こうらまで完全再現。がっかりなしのクオリティで、マリオを期待して観に来た大人も楽しませる、マリオの完全映画化。

マリオのモチベーションが、世界を救うとか、ピーチ姫がどうこうでなく、弟ルイージを救う、なのが良かった。
父親に認められず、自分の現状に胸を張れないマリオ。彼がどうやって自分を誇れるヒーローになるかの話。身近な弟を助けるためにボコボコにされても挑み続けることで、マリオはヒーローになる。世界とか大それたもののためでなく、身近な人間のために奮闘し、周囲からも、そして自分でも自分を認められるようになる。ピーチ姫やキノコ王国という、モチベーションになっていいうってつけの要素が横にあるからこそ、そこじゃなくルイージに終始することで際立つメッセージ。マリオがマグマに落ちそうなルイージを救ったところと、逆にマリオに向かうクッパの炎をルイージがマンホールを盾に食い止めたところは泣きそうになった。

プチマーベル感も楽しい。ユニバース化しそうなのを置いておいても、マーベルとの共通点があった。マリオがマグナムキラーを誘導して別空間で爆発させるところなんて、もろ『アベンジャーズ』のアイアンマンがミサイルを宇宙に持って行ったところのトレース。仲の悪いコングたちの軍に加勢してもらおうと頼みに行く流れは『ブラックパンサー』と同じ。(これは「キングダム」でもあったから、それ以前からあるベタなのかも知れないけど。)
あと、ゲームではドンキーの祖父であるクランキーコングをドンキーの父親にしていた改変も気になった。アメコミ映画が、原作のキャラクターやストーリー設定だけを使って映画オリジナルの組み方をする、みたいなことをしていて、そのノウハウでどんどんニンテンドー映画を続けてくれるのかなと期待できた。最後に撮る主人公たちの写真は、スター・ウォーズだなと思った。ドンキーがチューバッカで、男2女1がいて、キノピオがドロイド枠で、エピソード4の最後の勲章授与の光景をオマージュしてるのだろう。

有名ポップス曲をたくさん流す。ゲームで聞いてきたマリオ曲たちがアレンジ版で流れるのはいちいちテンションが上がるが、有名なポップミュージックがたくさん使われたのは意外だった。最初はペンギンたちがクッパに立ち向かうところで『キル・ビル』でもお馴染みの「新・仁義なき戦いのテーマ」が流れる。そして日本ではスクールウォーズでの翻訳版が有名な「ホールディング・アウト・フォー・ア・ヒーロー」は、映画だと『フットルース』でも使われていたが、今作でも途中の修行的シーンで流れる似たような使われ方。たくさんの映画で流れてきた「テイク・オン・ミー」も。ゲーム音楽だけでなく皆が聞き覚えのある曲もガンガン使うところに、ブランドを守るために狭く縮こまることはしないんだなと感じた。

ユニバース化が楽しみで仕方ない。続編確実な終わり方で、最高の客の帰らせ方。ピーチがどこからキノコ王国に来たのかも謎のままだし、ピーチの言う「たくさんの宇宙があるのね」はまさにユニバースを表していて他のキャラクターの世界ともつながる予感。ヨッシー登場の次回作、ドンキーの主演作、そして他のゲームも映画化していつかスマブラの映画化。そこまで期待して待つことができる、マーベル以来の大成功ユニバースのスタートに立ち会ったかも知れない。