基本的にインタビューだけのドキュメンタリーなので、その絵が世の中に知られるまでの前半はかなり退屈。だが絵の価値に疑問符が付くのと並行してオークション側の戦略により価格が暴騰する中盤から徐々に面白くなってくる。
ほぼレオナルド本人の手による「真作」なのか、レオナルドの弟子の手による「工房」作品なのか。オークション側の設定する顧客ターゲットや宣伝方法なども意図的であり、売る側も買う側も全員が「絵の価値を決めるのは自分ではない」とどこか突き放して自分の利益を優先させる。
最終的にはルーブルが鑑定するが、その後の対応もフランスのしたたかさがはっきり表れていてまあなんというか。
スクリーン越しでしか分からないものの、ぶっちゃけ個人的にはダヴィンチにしては下手過ぎるという印象だし工房作なのは明らかだろう。登場する専門家の面々もそれは理解している節がある。途中で価値を釣り上げようとして入り込んでくる輩が普段は現代美術を扱っていたというところも皮肉的。モダンアートのマネーゲームを古典美術に持ち込んでしまった悲劇にも感じられた。