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ダ・ヴィンチは誰に微笑むのmidoredのレビュー・感想・評価

ダ・ヴィンチは誰に微笑む(2021年製作の映画)
3.0
レオナルド・ダ・ヴィンチ作『サルバドール・ムンディ(救世主)』にまつわる美術業界のシニカルなドキュメンタリー。登場人物がみんな漫画のキャラクターのようでした。

描いたのはダ・ヴィンチなのか弟子なのか。真実はともかく、このドキュメンタリーを見ていると芸術そのものに果てしなく白けてきます。

芸術は超富裕層の資産でしかなく、それに涙する一般人は作品の資産価値を上げるための広告材料にすぎない。なんてシニカルな描き方だろう。でもこれが真実の一側面です。

絵の前で感無量になっているレオナルド・ディカプリオにはさすがに笑ってしまいました。レオ様繋がりキャンペーン。描かれているのが宗教的アイコンなだけに不謹慎ですらあります。

もちろん、希少性を高めて利益を出すことが経済の基本なので、放っておいても年々希少性が高まるだけの古典美術が間違いのない投資先なのも、真贋判定が美術売買の要なのも、ちょっとしたキャンペーンで価値を高めたくなるのも分かります。そもそも古典美術自体、大昔の富裕層が工房の親方に出資して作られたもので、美術とお金は本質的に切っても切れない関係にあります。

それでも、この狂乱と馬鹿騒ぎに、芸術とは何なんだと思わずにはいられません。508億円の絵に何を感じればいいのでしょうか。金の延べ棒を積んだピラミッドか、数えるのも面倒な数字の桁数か。

とんでもないお値段がついた結果、倉庫の肥やしになってしまったサルバドール・ムンディ。おばあちゃん家の階段でひっそりとおばあちゃんの魂を見守っていた頃のほうが絵としては真っ当だし幸せだったろうと思います。
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