カルダモン

サイレント・ナイトのカルダモンのネタバレレビュー・内容・結末

サイレント・ナイト(2021年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

オンライン試写にて。

正体不明の毒ガスにゆっくりと包まれていく世界。苦しみながら死ぬことを回避するために国は安楽死用のピルを配布している。聖夜に最後の日を迎えるにあたり、気心の知れた(?)友人家族で集まった11人の群像。

登場人物が多い室内劇ではあるものの、割とスルスルと気持ちよく観られるのは脳に負担がなくて良い。各人の関係性など、ベタベタとした説明がないことも私にはプラスに働いた。登場人物の誰にも感情移入せず、淡々と一夜のパーティが終わりに近づいていく様子を眺める。突拍子のない設定についても説明は一切不要で、登場人物のだれもが事態を把握していない。毒ガスで苦しんで死ぬ前に国から支給された薬を飲んで楽になろう。という静かな動き、真綿の圧力が恐ろしい。本当は薬を飲む必要なんかないのかも知れない、という疑念。

最初はどこにでもあるようなクリスマスのホームパーティが始まる。刻々と過ぎていく限られた時間のなかでそれぞれが平静を装っている。終盤20分くらいに起こる各人の心のグラつき、準備が整っていない感じが白眉だった。サイレントになりようがない一夜、監督はきっとこれが一番描きたかったんだろう。

『ジョジョラビット』のジョジョ役で鮮烈な印象を残してくれたローマン・グリフィン・デイヴィス。この子がほとんど成長せずにあのビジュアルで出てきたので驚いた。本作でもクリクリの眼で世界を見ていた。