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サイレント・ナイトのotomisanのレビュー・感想・評価

サイレント・ナイト(2021年製作の映画)
4.0
 金回りもよさそう、映画にも出て来そうな女たちがぞろぞろで何やら気持ち悪い。それに亭主かパートナー、子どもまで。表向き仲良さ気でもどうせこそこそなんか言ってそうだ。
 集まってどうする?しかも親譲りの大荘園、歴史を繙けば反王党派、法服貴族に成り上がってエンクロージャーで旨い汁を搾り取って蒸気機関で打って出て植民地で濡れ手に粟、ビッグバンにもばっちり乗っかって高学歴高収入、どこに死にたい理由がある?だが、どうせ死ぬなら誰と死のう?気心知れた元仲間が先で親兄弟、親類縁者は選外、今の仲間は◆◆の値打ちもない関係?だったりして。それであの連中なんだ。

 やれやれ、どうやら大人たちはすっかりその気でいるし、同じ子ども同士ではまともな話せる相手がいないしで、死にたくないアート君は思いをぶつける先がない。「尊厳死を保証します」の保健省公認自殺錠剤も頑迷な両親たちが憂き世忘れ、最後のクリスマスに浮かれるのも持て余し気味だ。
 毒ガスでみんな死ぬというが、そんな伝聞以外正体不明。おそらく急進展で、取材現場で当局者も研究者もどしどし死んで分析はおろか情報収集さえ追い付かない事態なんだろうが、子どもになにが知らされようか?

 とんだ田舎に幽閉されて、スマホなんぞ持ってたって案外親の情報統制は手強いらしい、抵抗の術、高次情報を得られないもどかしさが伝われば、そう、アート君のみならず、かの高学歴な親たちさえお手上げの事態の死亡現場からお茶の間までの各組織、各担当者、各ステップ全体のお手上げが想像できたらやっと及第点だろう。
 この映画はそんな情報、現場から最も遠い子ども、ところが困った事に聡明なアート君の恐ろしくも虚しい抵抗的気分の記録だが、同時に悲しくも本人は集まったごく身近にも拘らず、その人々の最期までの30分すら何ら知ることがない。一足先にガスを吸って仮死状態になってしまったので。

 11人の事も全世界の事も知ってどうなるものでもないが、目を覚ませば袂を分かった両親、愚図な双子はじめ集まった11人は全員死亡、世界人口と生きもののほぼ全ても死体の山、水食糧無し、そとは初雪の低温、幸いなのはガスがもう無さ気な事だけ?雪に凝集されたなら長期間自然の水はもう飲めない?最初に出会う同類は何者なのか、人間と呼べる状態なのか、ゾンビだったら、もっと悪人だったらどうしよう?生きてること自体が恐ろしいいのちのリセット、神様か地球さまか宇宙人野郎か、とんだプレゼントの発送元の知れる事が、いや知ってどうなるものだろうか?
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