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ナイト・オブ・ザ・リビングデッド/死霊創世紀のdm10foreverのレビュー・感想・評価

3.8
【王道を舗装】

ご存じジョージ・A・ロメロ監督が1968年に世に放ったゾンビ映画の金字塔「ナイトオブザリビングデッド」の正統なリメイク。

(正統なリメイク?)

そうなんです。
監督こそトム・サヴィーニが務めておりますが、脚本はちゃんとジョージ・A・ロメロが書いており、いわゆる「当人の知らないところで勝手に作られちゃったリメイク」ではなく、きちんとロメロ監督自らも先頭に立って作っている「正統な」リメイクなんですね。

なので、良くも悪くも「ナイトオブザリビングデッド」です。

恐らく、オリジナルから22年経って作られたというところに対して、何かしらの「意味(意図)」であったり、時代的なアップデート(時代背景の調和だったり撮影技術的なものであったり)というものも期待してしまうところではあると思うんですが、そこは一貫している「ロメロ節」。
ストーリーラインなんかはオリジナルのまんまだし、基本的なキャラクターの立ち位置やゾンビたちの「質感」もキチンと当時の雰囲気が再現されています。
つまり「ナイトオブザリビングデッド」は何があっても「ナイトオブザリビングデッド」なんですね。

ここで興味深いのは、主人公であるバーバラの性格にだけ唯一改変が見られるという点でしょうか?
前作では「怖がることしかできない弱い女性」的な印象が強く、どうしてもベンという屈強な黒人男性の方がメインとなって事態に向き合う時間が長くなるのですが、その点で言うと今回のバーバラは、序盤こそ恐怖のあまりに泣き叫んだりもしますが、徐々に生き抜くための精神的な強さも見せ始め、自らの意志で行動を起こそうという描き方が追加されていたように感じました。
この辺はきっとラストの「あるシーン」にも影響しているんだろうね。

ここでバーバラの中にキャラクターとしての自立が生まれたことで、前作でもあった「ベンとクーパーの醜い対立」の構図も客観的に見えてくるという「視点の変化」にも繋がっていて「結局一番愚かなのはパニックを起こして互いにいがみ合う人間たち」っていう一貫したメッセージもより際立っていた気がします。
これは意図したものかは定かでないにしても、結果的には「意味が生まれた改変」であったのかなと。
この辺は時代の変遷に伴って生まれた自然な流れなのかもしれないですね。

反面、今作がフルカラー版でリメイクされたことで、オリジナルの長所(ストロングポイント)でもあった「モノクロ」という良さがなくなってしまい、その分「薄暗い画面が醸し出す不気味さ」が半減してしまった感は否めませんでした。

確かに「色の白いは七難隠す」でもないけど、何でも「モノクロ」にすりゃそれっぽく見えるってほど万能な方法ってわけでもないとは思うんですよね。。
それでも「ナイトオブザ~」に関して言えば、モノクロで表現されていたことで「主人公たちが籠城する屋敷」と「一寸先すら見えない闇の中に蠢くゾンビの大群」の対比が怖さを効果的に引き立てていたので、そこのコントラストをボヤけさせてしまうと、「先が見えない恐怖=絶望感」の表現としてはちょっと弱くて、その分若干評価にも影響しちゃったかな・・・。
オリジナルに(ほぼ)忠実であるが故に、そういう比較はどうしても避けられない部分でもあると思う。

まぁその辺を差し引いても、「ロメロ・ゾンビ」の描き方はキチンと踏襲されているし、「火を怖がる」「他人に食べ物(人肉)を奪われるとちょっと怒る」「棒を振りかざすと手でさり気なく防御姿勢をとってしまう」など、モブキャラでありながらも薄っすらと「ゾンビの個性」が見え隠れしたり、どこか愛らしさすらも残るあたりなんかは、ロメロが愛したゾンビを忠実に再現したんだろうなっていう気すらしてくる。

この当時に作られた映画のうちの一本としてみれば、それほど映像的にも特筆するような作品ではないのかもしれないし、下手すりゃ「なんじゃこりゃ?」にもなり得る作品です(重々承知の助)。

なんだけど、あえてロメロ監督が手を加えてまでリメイクを作ったっていう事を考えると、そこには監督の「ナイトオブザ~」に対する愛情みたいなものも感じるし、それが伝わってくるような気もしたんですね~。

決して万人にお勧めって言うほどの作品でもないし細々としたツッコミどころもあるんですが、個人的には結構好きかも、この映画。
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